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#747 ショパンコンクール 第2次選考結果に思う_a0113732_22183312.jpeg


ショパンコンクール第2次選考結果発表、現地(心の中)レポート()


 今朝第2次選考の発表があった。日本人は第1次で残った8人中、5人が3次へと進んだ。素直にスゴいと思う。発表はライブでは観られなかったので、録画で観た。もうメチャクチャ緊張した。審査員がステージに立って、名前を呼び始めたとき、わたしの名前がなかったらどうしようかと思ったくらいだが、あるはずがなかった(爆)! しかしほんとうにドキドキした。

 まずこのコンテストの開催を知らせてくれたSコさんがらみで応援していた京増さんが落選したのは残念だった。次にわたしが勝手に3強と踏んでいたひとり、韓国のHyounglok Choiが落選したのは驚いた。数日前の記事に書いた通り、受けが悪いとは予想はしていたものの、これほどだは思わなかった。Kyohei SoritaAlexander Gadjievは順当なところだし、Yasuko Furumiもわかる。今回のコンクールで見つけてあっという間にファンになったMiyu Shindoも私としてはトーゼンだと思う。Aimi Kobayashiの音楽が理解されたのは正直なところ意外だが、Hayato Suminoが残ってHyounglok Choiが落ちるのはわからない。簡単に言うとSuminoの音楽は軽く、Choiは重い。Kobayashiの音楽の深みはわかって、Choiの深みがわからないはずがないから、なんとなく納得ができないのだ。何か音楽以外で、水面下で動いていることがないのかと勘ぐりたくなる。しかも、もともとは20人しか残らない第2次選考に今回は23人残った。審査員は、今回のコンクールのレベルの高さを理由に挙げていた。確かにレベルが高いのはよくわかる。前回までをまったく知らないから、わたしには比較ができないが、2次選考のトップ集団は新人と呼ぶのはおかしいほど音楽が成熟している。メチャクチャうまい人とかなりうまい人しか残っていない。しかしだ、20人と決めたものを23人にするという、曖昧な決着ぶりが解せない。Sコさんのfb投稿に地元ポーランドが多いと書かれていたから、気になって調べてみた。以下が第3次へと進んだ国籍別の演奏者数だ。

1 ポーランド 6

2 日本 5

3 イタリア 3

4 韓国、ロシア、カナダ 各2

5 スペイン、アメリカ、中国 各1

 まずこのポーランド6名って、何だろうか? と思う。地元びいきがあからさまだ。ほとんど笑えるほどアンフェアだと思う。いや、それが実力だったと言われれば、論理的には反論できない。しかしそもそも2次合格者が20人と決まっているのを23人にする、という決着方法が合理的ではない。つまりわかりにくい、つまり灰色だ、つまりいろいろと情実、政治、派閥が絡んでいる。まあクラシック音楽なんて元々が権威主義の塊みたいな世界だとは思うが、音楽共々今の時代から取り残されていると思う。

 まあそういったあれこれを置いておいても、私が一番気になるのは韓国のHyounglok Choiの落選だ。というのは、似たような路線でわたしが好きになったMiyu Shindo2次を通過しているからで、どうしてなのかが腑に落ちない。正直なところ、Miyu ShindoHyounglok Choiは私の耳にはほぼ互角だった。3次の課題曲はソナタの変ロかロ短調か24のプレリュードのいずれか。Hyounglok Choiの葬送が聴きたかった。

 というわけで、もうここから先はドシロートの出る幕ではないとヒシヒシと感じているので、シロート選評は終わりにして、あとはMiyu Shindoの応援に回る!


# by bbbesdur | 2021-10-13 22:57 | music

#747 ショパンコンクール ステージ2 その6_a0113732_09324124.jpeg

 

ここまで内容と写真がアンマッチなblogも珍しいかも(爆)!


Su Yeon Kim

・バラードから聞いたけれども、いきなり引き込まれた。素晴らしい!

・東洋人による正統派ショパンに聞こえる。

・音が瑞々しく、輝いている。ただペダリングが派手過ぎて、音が濁る箇所が多い。

・確固たる技術と豊かな音楽性に支えられた見事な演奏で安定している。途中から聞いたので、全体は分からないがバラードとポロネーズは名演だった。


Aimi Kobayashi

・冒頭から前回よりも「やってやる!」という意気込みが感じられた.

・じっさい前回よりは全然イイ。というか、曲が大きくなっていくに従って、私の耳に彼女のやりたいことが聞こえてきただけかもしれない。少なくとも音色のバラエティがある。

・幻想ポロネーズ、たぶん彼女はこの曲を葬送音楽のように感じているんだろう。極めて独特な音楽に仕上がっている。独特すぎて音楽が前に進んでいく推進力が犠牲になっている。前に進むというよりは、奥へ進んでいるようなのだ。 そもそもショパンの音楽って、ここまでの「解釈」に耐えられるんだろうか? 聞いたあと、難解な文学本を読んだ後のような疲労感が残る。少なくとも音楽を聞いた気はしない。

・それはバラードでも一緒で、やっぱり彼女の説明を聞いているような気がしてくる。ショパンの音楽を感情の起伏に従って揺れ動く「動と静」という両局で捉える演奏家は多いと思う。でもこの人はそれだけでは足りないみたいなのだ。静けさが死、悲しみ。盛り上がりが生、喜び。という自然界の2元世界を行ったり来たりしているように感じる。ショパンのすべての曲をそんなに複雑に解釈することが適切なアプローチなのかな? と思ってしまった。

・ワルツもワルツって感じじゃなく、Aimi Kobayashi世界でそれはそれでスゴいが、少なくとも私の好みではない。

・変ホのポロネーズも、これまでの3曲と変わらない。すべての曲が彼女の解釈で同じように聞こえるから、曲の特性が不明瞭になる。

・まあなんとも不思議な、あるいは禅的なショパンだ。第1次のときは、こういう風には感じなかったから、やはり出来不出来や、曲による変化があるのだろう。しかし西洋人が彼女の作り上げる静けさの中に、自然の万物が潜んでいるというような精神世界を感じることができるのだろうか。西洋音楽には西洋音楽の文脈というものがあるはずだ。

2次突破にこのおどろおどろしさが通用するかなあ。まあ他とは違っているという目新しさはある。しかしそれにしても長調を4曲揃えて、これだけ暗鬱に弾けるものなのか、と、ちょっと心配だったが、弾き終わってからの聴衆の反応は驚くほど良かった。拍手の長さは異常なほどだ。演奏後の挨拶で顔を上げた瞬間「してやったり!」という表情も見えた。もしかしてみんなフツーのショパンに飽きてるのかもしれないし、わたしの聴き方が日本人っぽすぎるのかもしれない。


Mateusz Krzyzowski

・一風変わったAimi Kobayashiの後だから、なんだかスッキリする。初のロシア人だが、音楽は伸びやかに進んでいく。

・弱音のパートではそれなりの工夫をして聞かせようとしている。

・ト短調バラード、悪くない。ミスは多いが、音楽が空気の波に乗って息づいているのがよくわかる。

・全体的に技術はイマイチで、弾き切れていないところも多い。それにしてもミスが多すぎる。こういうのって2次では結構、厳しくマイナスされてしまうんじゃないだろうか。

2次でエチュードって初めて聞いたかも。もうちょっと左手にはっきりとした表情があってもいいんじゃないか。

・英雄ポロネーズ。今回のコンクールでこの曲を一生分聞いた気がする(笑)。しごくまっとうなオーソドックスな演奏。今回聞いたいろいろな英雄ポロネーズには新鮮な演奏もまあまああった。序奏のあとに「英雄登場!」って感じで「ドーン」とテーマが出てくるところで、あえてソフトに入る演奏(日本人の二人Hayato SuminoTomoharu Ushidaがそう)は気持ちが良かった。でもこの人は極当たり前に弾く。しかしそういえばこの曲、今回女性で聞いてない。やっぱり男の曲なのか。


# by bbbesdur | 2021-10-13 09:35 | music

#746 ショパンコンクール ステージ2 その4_a0113732_18291414.jpeg


実家で久しぶりに紙の新聞を見てたら、弟子屈の宿のMや

で知り合った知人の名前が出てきてビックリ。さすが!


Xuehong Chen

・バルカローレ、やや左手が添え物になっている時間帯が長いが、でも全体的には音楽が流れている。とても優しくて、母親からの視線が感じられる子守歌だ。

・良い音が鳴っている。

・変ロのソナタって、2次で弾いても良かったんだ、ビックリ! もしかして勝負を掛けたのか。でも、やや戦局(選曲)を見誤った気がする。ここは無難にポロネーズあたりで勝負して3次で勝負すべきだったのではないか。やや音楽が1本調子で陰影に欠けるし、演奏が荒い。

・英雄ポロネーズ、ここまで聞いた中で一番オーソドックスだった。少ないミスタッチが目立ったところで発生しているのが惜しい。しかしみんなこの曲好きだよね。やっぱりみんなこれ弾きたくてこのコンクールに出てるんだろうなあ。まさかリヒャルト・シュトラウスのように自分を英雄に見立てているわけでもないだろうけど、弾いている演奏者にどこかしらナルシスティックな気分があるように思える。でも、これってやっぱり聞き慣れているだけに個性を出すの難しいんだよね。

3次に進むと思う。


Hyounglok Choi

・とても女性っぽい演奏に聞こえる。

・嬰への前奏曲が幻想的だ。かなりイイ。いい意味での音楽の揺れを感じる。

・たぶん審査員受けしないだろうけど、ショパンを感じさせない叙情性が好きだ。水が澱んだり、流れたりしながら、下流に流れているような演奏だ。

・スケルツォもイイ。出だしサイコー!

・いやいや、この人、驚嘆すべき繊細な音楽性だ! 

・音楽がこの人のフィルターを漉して、外に流れ出している。

・いやあー、この繊細さ、そしてほとんど「勝手な」と呼ぶべき叙情的解釈、もう大好きだ。こうじゃなくっちゃ! ショパンを聴いている気がしない。いやあ、もうこれ以上のドシロート批評は失礼だ。いいよー、とてもいい!

・技術的にはKyohei SoritaAlexander Gadjievと並んで三強だと思う(ここまで聞いた中では)

Alexander Gadjievのステージのように、次の曲が待ち遠しくなる。

・音色の多彩さも抜きんでている。全体的に音楽が濡れているように聞こえる。

・英雄ポロネーズをアンコールで聴いて、なんだか、コンサートをひとつまるまる聞いた気分になった。この人、スゴい! けど、保守系審査員には受け悪いだろうなあ。

・しかし、ファイナルのハードルがどんどん上がって行く。というか、いい加減聴くの疲れたから、3次選考いらない。この時点で10人選ぶのは、それほど難しいことじゃないと思う。


Federico gad Crema

・幻想ポロネーズ、いいねえ。何も悪いところがないし、技術的にものすごく安定している。ミスの少なさも抜きんでている。

・音楽が乾いていて、無用なムーディーさがない。

・しかし、好きかと聞かれると、ちょっと考え込んじゃう。余分な叙情を振り払って、ただ淡々と演奏しているように聞こえる。この人ならではという点が見えないのは、つまり正統はピアニズム路線だからで、シロートのわたしには巧さはわかるけども、音楽の良さがわからない。

・ほとんど演奏は完璧だ。ドシロートが語るべきことはない。なんだかフツーにコンサートに来て、素晴らしい音楽を聞いたという感じだ。

・音量のコントロールが巧みで、曲が自在に膨れたり、縮んだりする。

・この人、この技術でほんとに新人なの? 

・この人も確実にファイナルに進むだろう。

いやあ、なんだか、ここにきてレベルが一段上がってきた気がする。


Alberto Ferro

・初めて演奏者の指に結婚指輪見た! 会場のどこかにいるだろう奥さんの方が緊張しているかも。本人はいたって、フツーに音楽を前に進める。

・自分を緊張から解くために、こういう軽めの曲を先頭に持ってくるというのはアリなんだろうな。

・たまたまひとつ前の演奏者もイタリア人だったが、そう思うからかどうか、音楽の方向性が似ている。ピアノを弾いているというよりも、歌っているように思えてならない。

・しかしそれにしてもこの人もうまいなあ。それも猛烈にうまい。もう歌いまくってる。

・東洋系のピアニスト(日本と韓国)は、弱音の旋律をここぞとばかりに叙情で捉えようとすることが多く、そこにはどうしても(奇妙な)精神性がつきまといがちだ。音楽が止まってもイイから、そこに何かの意味を持たせようとする傾向が強い。でもイタリア人ピアニストはひとり前のFederico gad Cremaもそうだったけども、精神性なんて言う方向性に行かず、なんとか歌わせようとしている。つくづく民族によって、音楽の捉え方が違うなあと思う。我々東洋人にとっては西洋音楽の歌心を抽出することはきっと難しいのだ。だから音楽に意味を持たせたがる。意味がないと音楽できないのだ。無音に音楽がある、なんて禅みたいなことも言いたくなる。だからドイツ系の音楽は理解しやすいのだ。特にベートヴェンとかは。

 でも、歌心となると、一気に難しくなる。歌って、おそらく民族の文化そのものだからだ。イタリアの歌がポーランドの歌と、どの程度違うかわからないが、こういった演奏を聴いて、ショパン的だと思うのだろうか。わたしの感覚では、やっぱり、ちょっと違うという気がする。簡単に言うと、やっぱりちょっと軽いと思う。そう思う時、東洋人が弾くショパンって、結局ポーランド人にはどうやっても正統派ショパンには聞こえていないんだろうなあと思う。どれだけ技術があっても、これじゃない、って言われてるんじゃないのだろうか。


# by bbbesdur | 2021-10-12 18:42 | music