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#3 週末の駅前

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 日曜日の夕暮はなにを見てもウラ悲しくなるけれども、駅前に放置された自転車なんかもそうだ。月曜日の朝を暗示しているではないか。
 with GRDII 2009/1/25撮影
# by bbbesdur | 2009-01-25 21:52 | around tokyo

#2 横須賀の情熱

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 横須賀基地の岸壁に仲の良い2羽のカラスがいた。車を近づけても逃げず、窓を開けても逃げず、カメラを構えても逃げなかった。天気予報では気温は17℃まで上がるといっていたのに、いつまでも寒いまま日が暮れてしまった。カラスはねぐらへ帰っても、きっと仲良くしているはずだ。
 with GRDII 2009/1/24撮影
# by bbbesdur | 2009-01-24 12:37 | around tokyo

#1 白いパンプスの女

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 去年のいまごろ、北風が通り抜けている新宿の地下道で、ぼくはひとりの女性に呼び止められた。
「久しぶりじゃないの」
 ぼくは女の顔を見つめた。
「ごめん、おもいだせないんだ」
 女はぼくを見た。
「ほんとうに?」
 ぼくは不安になってきた。女は傘を持つぼくの左腕を取った。
「そのうちおもいだすわよ」
 ぼくたちはしばらく無言で歩いた。中村屋を過ぎ、タカノフルーツパーラーを過ぎてもぼくにはなにひとつおもいだすことができなかった。紀伊国屋の入り口を過ぎて、宝くじ売り場が見えてきたところで、ぼくはおもいきっていった。
「君の名を教えてくれないか?」
 女は険しい顔をしてぼくを見つめ、腕を振り払うようにして歩み去った。
 遠ざかってゆくパンプスの踵は豊かな白鳩の胸のようだった。女はすこし行くとまた立ち止まり、正面からやってきた男を止めた。男は背が高く、整った顔立ちをしていた。雑踏で彼女の声はまったく聴こえなかった。男は首を振った。
 冷たい風が地下道を吹き抜け、道往く人々は前のめりに歩いていた。男はもういちど首を振ると、黒いビジネスバッグで女を振り払うようにして歩を進めた。男のそのやり方をぼくは憎んだ。
 階段を登って地上へ出た。空も人もすべてが朱色に染まった広場にはたくさんの鳩がいた。北風に負けないようにからだをいっぱいに膨らませていた。白鳩を捜したが見当たらなかった。
 with FinePix F30  2008/3/14撮影
# by bbbesdur | 2009-01-23 23:00 | around tokyo