2009年 02月 24日
沖縄常夏伝説
冬に沖縄を訪れる人はすこしだまされたような気分になるかもしれない。航空会社や旅行社のパンフレットで見た「青い空」「青い海」「白い雲」がないのだから。
じつは沖縄の冬の晴天率はおそろしく低い。三日滞在して、晴れた日が一日でもあれば幸運とおもったほうがいい。北風も強い。もちろんビーチで泳ぐことはできない。パイナップルもおいしくない。マンゴーはない。島らっきょうも旬じゃない。もちろんゴーヤは時期じゃない。暑くなくっちゃオリオンビールはおいしくない。
というわけで、冬の沖縄はないないづくしなのである。観光産業でなりたっている島だから、もちろん「冬にはこないでください」とはいえない。それはわかるけど、なんだかだまされたような気分で那覇空港にもどってくる冬の旅行者たちをなんとかしなくてはならない。
沖縄が好きで好きでしかたがないぼくとしては、「旅行パンフレットにだまされないで! 夏にもういちどきてください。ゴーヤもある、パイナップルもおいしい、島らっきょうはまさに旬、オリオンビールは旨い、そしてなによりも、なによりも、想像してみてください、真っ青な空に浮かぶ白い雲と、目を灼くほどに光り輝く青い海と白い砂浜を!」と冬の空港ロビーで曖昧な顔をしてフライトを待っている人たちに説明して回りたいのである。
with GRD2 2009/2/22撮影 那覇
2009年 02月 23日
ふたりを運ぶのは、雨
ふたりはとても暗い表情でエレベーターから出てきた。男女の関係を持つ者のみがまとう独特の湿った気配を引きずりながら。ぼくの目にふたりは高校生に見えた。若いというよりは、幼かったのだ。女の子は愛くるしい顔をしてミニスカートがとても似合っていたし、男は優しい目をしていた。それなのにふたりはすれちがっただけのぼくのこころを冷たくした。もうふたりは終わりかもしれない。あいにく最悪のタイミングで雨が降り出した。少女の声は雨音に紛れ込んでしまいそうだった。それに答える少年の声も。ふたりは空港まで行く方法を語っていただけなのに、ぼくの耳にはふたりが空港まで行く方法は存在しないように聴こえた。ぼくがエレベーターに乗り込んだとき、赤い傘が開いて、すこしだけふたりの周囲が明るくなった。ひょっとすると雨が気を変えて、ふたりをどこか別のところへ連れていく気になったのかもしれない。
with GRD2 2009/2/20撮影 那覇
2009年 02月 22日
沖縄はずるい
小学校の校庭には桜が植わっていなければならない、という本土文化をそのまま真似るとこうなるという見本がこの写真である。沖縄文化の特徴はその混交性(チャンプルー性)にあるというのはひとつの詭弁だとぼくはおもっている。文化というのはそもそも伝染性を持っているから文化なのだ。校庭の脇に桜を植えるという行為は、いかにも沖縄的な文化吸収(物真似)なのだが、本土とは気候がちがうから、自動的に奇妙な個性が賦与される。植物も食べ物も建物も衣服も酒もけっしておなじにはならないで、独特に変容する。日本の他の地方都市が東京を真似た途端に地方色を、同時に魅力を、失ってゆくというのに。小学生の体育着も帽子もまるでおんなじなのに、校庭は見事に赤土で、校庭に負けないようにと桜も赤く咲く。おなじことをして、ちがうものが現れるなんて、沖縄はずるい。
with GRD2 2009/2/19撮影 那覇