人気ブログランキング |

#718 音楽というコスモポリタン_a0113732_22533040.jpeg


いやはや、ほんとうに驚いた。明日の未明に東北に向かって出発して、明日は尺ヤマメが釣れることになっているから、体力温存しようかと思ったけども、買ったチケットをムダにするのも、もったいないからサントリーホールまで行ってきた。反田恭平のピアノ、神尾真由子のヴァイオリンでチャイコフスキーの2つの協奏曲を聴いた。ふたりには日本人の演奏を聴いている時に感じる独特の堅苦しい行儀の良さがまるでなかった。日本という国籍の枠組みから、何歩も足を踏み出している。こんな若者が世界をさらにコスモポリタン的にしていくんだと思う。反田恭平は和製ギレリスと呼びたいくらい(もしかするとすでに誰かがそう呼んでいるかもしれないほど音楽の方向が似ていると思う)、音が透徹していて、力強く、日本人的な抒情と訣別している。ギレリスとアルゲリッチを足して2で割ると反田恭平になると言ったら、さすがに褒めすぎか! 神尾真由子はもう新人とは呼べない経験を積んできているけれども、聴き飽きたこの協奏曲の随所にハッとするフレージングでぼくたち聴衆を驚かせてくれた。特に第1楽章の入りは、独特の静けさに満ちていて、聴いてる皆が一瞬、息を呑んだことがわかった。ふたりとも恐れをしらず、音楽がとても大胆だ。日本の音楽家がようやく規律正しい日本の音楽教室を飛び出した感が強い。あと何年、この若者たちを聴けるのかわからないけど、老い先に大いなる愉しみが残されていると知って嬉しい。とっても明るい気持ちで、新宿のデパ地下で惣菜買って、ロマンスカーを自分に奢って、実家に向かった。明日の朝は、暗いうちはラ・フォル・ジュルネで感銘を受けたヴォックス・クラマンティスの歌うデュルフレを聴きながら運転して、薄らんできたらロスフェルダーのギターを聴き、日が昇ったらブルックナーのモテットを流して、静かに北上しよう。
by bbbesdur | 2019-05-12 23:02 | around tokyo

#717 東京都心のブラックホール_a0113732_08282370.jpg


GWの都心って、ほんとうに空いていて、ほぼブラックホール状態で大好きだ。電車もガラガラだし、人が集まっているのはイベント会場だけ。ただ今年のラ・フォル・ジュルネは人が少なかったと感じた。今回はヴォックス・クラマンティスの声楽アンサンブルとロスフェルダーのギターの2プログラムだけを聴いた。2月ごろに演目の発表があったが、聴きたいと思うプログラムが少なかった。わたし同様に感じたファンが多かったんだろうが、クラマンティスとロスフェルダーを聴いて、きっと他も良かったんだろうな、と少々後悔ぎみだ。地味なプログラムのときこそ勉強のチャンスだったのに。来年は昔のように3日間、朝から晩まで音楽漬けになっていよう。

しかしそれにしても東京国際フォーラムは音楽家にとっては試練の場だ。もともと音楽用の会場でないから仕方がないとはいえ、すべてのホールが残響ゼロどころか、会場によっては床に分厚い絨毯が敷かれていて逆に音を吸い込んでいる。クラマンティスの12人のメンバーはブラックホールに向かって歌っていると感じたはずだ。一切のごまかしがきかず、声を出している間のほんのわずかなピッチの揺れが命取りになる。ことにフレーズを歌い終わって油断する瞬間が鬼門のようで、0.1秒も気が抜けない。聴いているこちらも裁判所の傍聴席に座っているような気がしてきて、いたたまれなくなる。ただそれだけに音楽と直に対峙している感が極めて強い。演奏家、ことに声楽家にとっては生き地獄のような環境で、歌っている本人には自分の周囲の数人の声しか聴こえていないはずだ。あの状況でハモることができるだけでも驚きなのに、彼らのアンサンブルの技巧といったら! ことに今回初めて聴いたエストニアのアルヴォ・ペルトという現代作曲家の『7つのマニフィカト・アンティフォナ』の凝りに凝った和音には震撼させられた。ロスフェルダーのギターは初めて聴いたけれども、ウマすぎてほとんどわたしはアホのように笑って聴いていた。世の中、超絶名人っているものだ。




by bbbesdur | 2019-05-06 08:57 | around tokyo