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カテゴリ:flyfishing( 55 )

#719 パタゴニアの『ARTIFISHAL 』試写会の感想_a0113732_11013109.jpg

 ものすごく乱暴に一言で言うと「鮭(鱒)の放流を止めよう!」というメッセージの映画で、放流魚が天然魚に与えるネガティブ・インパクトで魚が小さく、少なくなるという事実が語られている。
 日本と米国はあまりに河川、海洋の文化、歴史、環境がちがいすぎて、この映画のメッセージをそのまま受け入れることはできないとは思う。
 映画を観てなによりも痛感したのは、鮭鱒を対象としたゲーム・フィッシングがもたらす日米における経済規模のちがいだ。米国ではゲームフィッシュビジネスが地域経済と強く結びついている。魚が少ないと釣り人がやってこないから、大量に放流するというのが、これまでの米国各州の定番のやり方だった(モンタナ州以外)。しかし今その方法を変えないと、結果的に魚は野生を失い、かつ減少してしまう。だから止めようという、かなりわかりやすいコンセプトである。このわかりやすいコンセプトに対して、地元の政治経済はもちろん例によって不明瞭な利害関係でがんじがらめになっているから、その壁を突破するのは簡単なことではないと予想できる。それでもそこに一石を投じるパタゴニアをわたしは個人的には支持する。つまり彼らの製品を買うと言うことだ。
 日本の大半の企業は自分たちの作ったモノ、あるいは提供するサービスを通して社会に貢献するというのが基本姿勢だ。お金と労力をかけて社会になんらかの問題提起をし、それを社会的、もしくは政治的な運動にしようする意思はない。商売への影響が怖くて、そんな余計なことはできないのだ。お上に逆らうことをタブーとしてきた日本の長々しい歴史と、王侯貴族が存在しない平等ベースで国を短期間で作ってきた(あるいは今も作っている)米国との、どうしようもない文化的なちがい、スピード感のちがいが、企業姿勢の根底にある。
 今回のパタゴニアの問題提起はわかりやすいから、消費者にとっては賛成反対の判断がしやすい。反対ならば、パタゴニアの製品を買わなければ良いのだから。あるいはレベルの低い企業は我田引水的な問題提起、もしくは協力要請をすることもあるだろう。コスト、手間、時間を削減したいホテルが連泊のゲストに、地球環境保全のために部屋の掃除とベッドメイキングをしなくても良いか? と尋ねるように。
 でも、パタゴニアがほんとうに期待しているのは、釣り人の運動への参加だろう。やっぱり陣頭指揮を執っているイヴォン・シュイナードは米国人なのだ。パタゴニアの総売上に占めるフライフィッシング商品の割合は1%前後だそうだ。そんな割の合わないビジネスに投資をつづける釣り人イヴォンを同じ釣り人として応援したいし、割の合わないビジネスに関係した問題について、投資を惜しまない姿勢には敬服するほかにない。マトモな国を作ることは国民の責任だと心の底から信じて疑っていないからこそ、こういう映画ができる。

 日本には日本の難しさがある。だから、そのあたりの現状を映画の後で佐藤成史さんの進行のもとに、パタゴニア・アンバサダーのディラン・トミネ、水産試験場の人、両毛漁協の人、紀伊半島を流れる200河川でDNAの調査をしている人、然別湖で1000人の釣り人に調査を行った人、高原川漁協の人などの発言を交えたトークの時間があった。
 漁協というのは「魚類の増殖が義務付けられている」という縛りの範囲内でしか活動できない。映画の後のパネルトークに参加されていた高原川漁協の人たちが「釣り人が放流を求めているからやっている」と言う現場感が印象的だった。もちろん釣り人から漁協に対しての別な意見もあるだろう。しかしいまだにキャッチ・アンド・イートが主流の日本の現場ではそれが現実なんだと思う。天然でも、養殖でもいいから、家に持って帰る魚が必要なのだ。然別湖で1000人の釣り人に調査を行った人の発言もあった。釣り人が数や大きさよりも、魚の野生さを重視する意識改革から始める必要がある、というような趣旨だった。理屈も気持ちもわかる。でも、いつだって、数、大きさ、野生さ、そのすべてを、もっともっと、と欲しているのが釣り人という存在なのだ。
 ゲーム・フィッシングのあり方があまりにちがいすぎる米国発の問題提起を「これは日本ではできないよー」と言ってしまうことは簡単だ。けれども「じゃあどうするの?」という問いに対して、明確な手段を示すことができる人、リーダーシップを取れる人は残念ながら日本にはいない。日本の釣り場の現状が理想的だと思ってる釣り人なんて、ひとりもいないのに、わたしたちは何もできない、あるいはしないでいる。
 たぶん一番ズルい方法は日本の釣りをあきらめて、放流をほぼ一切していないモンタナ州やイエローストーンに逃げ、天然100%の鱒を釣ることだ。やっぱ魚は天然に限るよね、と。パタゴニアの製品を買い、経済的に米国ローカルに貢献しながら、日本ではあきらめのため息をついている、それが今のわたしの偽らざる非国民的姿であるということが、映画を観てよくわかった。さあ、どうする?
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『ARTIFISHAL』は明日9/8パタゴニア福岡を皮切りに、9/12まで仙台で上映される。



by bbbesdur | 2019-09-07 11:09 | flyfishing

#715 ふらい人書房 米国進出のアナウンス(本日限定)_a0113732_23441894.jpg


先日、横田基地内にあるAFN(旧FEN)本部にニュースの収録にお邪魔してきました。ニュースの内容は他でもない、ふらい人書房のさらなる飛躍に向けたアメリカ進出のアナウンスに関することです。もちろん、先方よりオファーを受けたときは「公共放送の場で、しかも米国の税金を使った施設でそんな私的な宣伝なんてできない」と固辞したのですが「あなたは毎年モンタナに行って米国経済発展のために大いに役立っているし、聞くところによればパタゴニア製品やシムズ製品を必要以上に購入しているのだから、その権利はある」と言うのです。そう言われてみれば、たしかに必要以上に買い過ぎているのは事実かもしれないし、まあそこまで言うのならと、しぶしぶ出演してきました。本日のお昼のAFNニュースで流すそうなので、暇な人は聞いてください。AMラジオの810kHzです。月曜日のお昼にAMラジオなんて聞けない、あるいは聞き逃しちゃった! という方のために内容の概略をお話ししておきますが、ふらい人書房の近未来計画として、1年以内をメドに米国のふらい人に向けた英語によるフライフィッシング書籍を発行し、米国と日本のふらい人を核に両国のさらなる友好を深めたいという内容です。しかしながら本当の思惑は別なところにあって、これまで日本の圧倒的な貿易赤字だったフライフィッシング産業界のバランスを修正すべく、日本から米国に英語のフライ関連書籍を流通させ、少しでも赤字幅を減少させることが目的です。もちろんやると決めたからにはピューリッアー賞を狙うべく、内容の濃いものにしたいと考えています。乞うご期待!


by bbbesdur | 2019-04-01 12:00 | flyfishing


限定のため当記事は削除させていただきました。


by bbbesdur | 2018-04-01 20:10 | flyfishing

#706 セカンド・ライフはファースト・ライフ_a0113732_19150445.jpg

 
9ヶ月後に迫ったセカンド・ライフの準備を進めながら、じゃあ、そもそもオレのファースト・ライフっていったいなんだったのか、と考えた。結局、わかったことは、じつはファーストもセカンドもショートもサードもピッチャーもキャッチャーも外野もなくて、ともかく、ぼくの人生はフライフィッシングと出会って以来、フライフィッシングを中心に廻ることになったという事実だった。恋愛や結婚もあった。でもフライフィッシングとの関係に比べれば、あまり情緒的過ぎて、ほとんど真実の上っ面を撫でているようなものだった。恋愛は恥ずかしくなるほどに性的だし、結婚は息苦しくなるほど社会的で、仕事はひたすら競争だけれども、フライフィッシングは信じられないほどにニュートラルで、ナチュラルで、いつでもどこでもぼくの脇に寄り添ってくれてきた。だからぼくの生涯の伴侶はフライフィッシングであって、それ以外は無用な付け足しのようなものだ。というようなことを、次の本でエッセイ集としてまとめようとおもっていますが、その前に、とりあえずふらい人書房第2弾『釣り人の理由』を発行しました。人生とフライフィッシングの関わり合いを六つの物語で表現してみました。フライショップでの1ヶ月間の先行販売につづいて、昨日、ふらい人書房オンラインamazon、一般書店で正式発売しました。ことに第四話の『仕事より釣りが大事と思いたい』はセールスマンとして社会に出た主人公が、セールスマンのままサラリーマン人生を終えようとしている中で、フライフィッシングとその仲間によって救われているという、ほぼ私小説と言って良い物語で、ぼくのファースト・ライフをほぼ等身大で書いたものです。サラリーマン経験があれば共感する方も多いのではないかなって期待しています。
by bbbesdur | 2018-03-24 19:17 | flyfishing

#700 最後の一匹

#700 最後の一匹_a0113732_22081165.jpg

 今年のラスト・フィッシュはイワナだった。最後の和風3点セットの主役はヤマメにしたかったのに釣れなかった。まっ、来年があるさ! シマネットの襦袢内張とソリッド・オクタゴンの漆風のザ・ジャパン・コンビほんとうに気に入ってます。今シーズンはアメリカはスイート・グラスの8角ロッド、日本はオクタゴンと、末広がりのロッドばかりを使いました。写真のロッドとはちがいますが、ソリッド・オクタゴンには藪沢用の6フィート半というのがあって、ほとんどリーダーだけで投げられる。このメーカーにはコンセプトや能書きだけではない、リアリティがあります。ただしぼくはソリッド・オクタゴンには作り手のこだわりが行き過ぎている部分があると感じていて(テーパーではなくて、パーツ)、いくつかの改良をお願いするつもりです。というわけで、今年最後の日も暮れて、ヤマメさん、イワナくん、また来年!



by bbbesdur | 2017-10-02 22:13 | flyfishing

#696 『ウルトラライト・イエローストーン』オンライン販売開始!_a0113732_09274191.jpg

 本日『ウルトラライト・イエローストーン』のオンライン販売を開始しました。「痔の話」だけを読んでいたただいている皆様には寝耳に水の話で大変恐縮ですが、じつはぼくは痔の他にも、フライフィッシングという宿痾に罹患していて、時間とお金と愛情を含むほとんど人生のすべてをその治癒のために当ててきました。

 来年定年を迎えます。大学卒業以来37年間働いた会社を卒業するにあたって、残りの人生は釣り三昧でという気持ちもありましたが、そもそもあとどのくらい人生が残されているのかがわからないので計画が立ちません。ぼくが人生でもっとも恐れているのは「釣りに飽きること」です。まだまだ人生が長く残されている途中で、釣りをやり過ぎて飽きてしまったら、とおもうとゾッとします。釣りに夢中になれなくなったとき、ぼくは自分の進むべき道を失うとおもいます。

 この本の序章にも書きましたが、この世に終わらない恋はありません。情熱的な恋が終わって、新しい恋を追い求める人もいれば、冷めた恋をぬるま湯くらいに温め直す人もいるでしょう。30年以上連れ添ってきたフライフィッシングに対して、毎朝同じバス停に立つ素敵な女性を見るような気持ち(いやらしい気持ち)になれないことは事実です。だからぼくはフライフィッシングを電子レンジに入れて温めるような気持ちで「ウルトラライト・イエローストーン」を書き始めました。その結果、お皿が取り出せないほどに熱くなってしまって、自分でも驚いてしまったわけです。この本はフライフィッシングをテーマに書いたと見せかけていますが、じつはかなりシュールな恋愛本なのです。30年付き合ってもなおアツアツの関係を維持できる秘訣が知りたい方は是非以下をクリックして、めくるめく耽美世界を堪能してください(R-18) 。

https://www.flybito.net/online-shop

という事情で「痔の話」、やや中断が長くてスミマセン!


by bbbesdur | 2017-07-10 09:36 | flyfishing


 SOLID OCTAGONというロッドメーカーが誕生した。ショップは渋谷駅から7、8分歩いたところにある。とっても素敵な店舗だ。あるいは素敵すぎて、扉を開けることを躊躇うふらい人さえいるかもしれない。しかし気楽に扉を開けて、オーナーに声を掛けてみるといい。非常に気さくでソフトな人物が目の前に現れるだろう。ぼくはこの人、丸山聰さんとは鱒やの橘利器さんから紹介されて以来10年近い付き合いがある。紹介されたその日に、当時は渋谷の109裏にあった工房に連れて行かれ、グラファイトのソリッド・ブロックを8角形に削り出して作ったというフライロッドを初めて手にした。グラファイトとは思えないしっかりとした重量感があった。

「中空ではないところが最大の武器なんです」

 言うまでもなく、市場に出回るグラファイト・ロッドはほぼ100%金属のマンドリルにカーボン・シートを巻いて作られるため、結果的に中空構造となる。そんな圧倒的多数の中空軍団を敵に回し、丸山さんは自信を持った口調でそう言ったのだった。

 削り出しの機械も自製だった。バンブーロッド・ビルダーで言えばライル・ディッカーソンみたいだと大いに感心した。じつは丸山さんは表参道にあるSORAという指輪メーカーの社長で、金属加工は本職なのだ。直径2センチにも満たない金属の加工と1メートルを超えるグラファイト加工が同じはずもなく、そこに丸山さんが費やした10年という気の長くなる歳月がある。出会った当時、いつの日かロッドメーカーとして自立したい、と語っていたが、その時のロッドの完成度から、正直なところこんなに長い年月が必要だとは思わなかった。10年近い年月はそのまま丸山さんのプロフェッショナルとしての矜持なのだ。こういうメーカーこそ信用できる。コンセプトが10年前とまったくブレていないのもスゴい。8角という形状に代表されるユニークなコンセプトを生かしつつ、キャスト性能や耐久性、信頼性を向上させるためにロッドの各要素をブラッシュアップしつづけたのだ。

 バンブーロッドをメインに使うようになってからというもの、軽すぎるロッドを一日使うとぼくの肘は腱鞘炎気味になってしまう。OCTAGONにはバンブーロッドより少しだけ軽くした程度の適度な重量があって、反発したトルクでラインを運んでくれる。普段バンブーロッドを使っているけれども、たまにはグラファイト・ロッドも使いたいというふらい人にはうってつけのロッドだ。大概のバンブーロッドよりシャープなラインをキャストすることが出来るから試して欲しい。

 すべての金属パーツが美しく、かつ素晴らしく機能する。なぜ8角なのかという点については是非ショップを訪れて、直接丸山さんに聞くと良いだろう。グリップまで8角なのだが、じつはかなり使い勝手が良かった。かつフェルールも8角だから、ロッドを繋ぐときに100%ガイドがストレートに並び、かつ釣っている最中に左右にズレることもない。グリップとフェルールはラウンド形状でなくてはならない、というのは既成事実に起因するぼくらの先入観だ。道具のデザインは服飾などのデザインとは違って、あくまでも新デザインに新機能が付随して初めて古い伝統と訣別出来るのである。

 写真のロッドは24トン・カーボン(湖用、海用のロッドはそれぞれまた別な種類のカーボンを使っている)を使って開発された渓流用のロッドで、先週マジソンの激流に乗って下った15インチブラウンの抵抗に耐えた。本当は20インチ・ブラウンでバットの強度と粘りを試したかったんだけども、それはぼく側の問題で来年の宿題だ。

 ところでブランク・カラーは屋内で見ると超ジャパニーズな渋い漆塗り風なのだが、モンタナの青空の下では写真の通り、なぜかスカーレット・レッドに変身してアメリカン・ビューティーになる。これは写真の現像のせいではなく、ぼくはこの大和撫子の変幻性を大いに気に入っている。このあたりに指輪メーカーとしての着色の秘密が隠れているように思える。


by bbbesdur | 2017-07-09 13:10 | flyfishing

#593 生きる

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 まるで「生命」という名のモニュメントのように、彼はきっといまでもモンタナの青空を見上げている。
 with E-M5 12-50mm 2012/7 イエローストーン
by bbbesdur | 2012-08-29 00:51 | flyfishing

#587 Blue Ribbon Flies

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 今シーズンの初めに、ブルーリボン・フライズは毎週発行しているニュースレターで、「ついに店の模様替えをした」とアナウンスした。わたしは、ブルーリボンも時代の波には勝てないのだろうな、とおもってややしんみりとした気分になった。あの気楽な雰囲気がなくなっちゃうのだろうか。ヘンリーズ・フォーク・アングラーズのように、まるでお洒落すぎる店に変貌してしまうのだろうか、と危惧したのだった。わたしは釣具屋は釣具屋らしい佇まいのままであって欲しいと願う古風な釣り人なのだ。
 で、先日行って驚いたことにはなにも変わっていなかった。驚いてクレイグに訊くと、
「おいおい、ユキどこ見てるんだよ、帽子コーナーが入口に近くなったじゃないか」
 というので、安心したわたしはおおいに笑った。

 クレイグ・マシューズはミシガンで警官をしていたが、フライフィシングに没入したくて、志願してウエスト・イエローストーンの警官になった。しかし州がちがえばまるでちがう組織だから、たぶんほんとうにイチから出直したのだろう。奥さんのジャッキーもミシガンの警察で働いていた。警官出動のディスパッチャーをしていて、つまりは職場結婚だ。
「初めはウエスト・イエローストーンの街中に住んでいたんだけど、騒々しいシティー・ライフがイヤだから、街はずれに引っ越したの」
 と、かつてジャッキーはわたしに語った。オフ・シーズンともなればゴーストタウン同然のあの街のどこにシティー・ライフがあるのだ、とわたしは呆れた。朝晩の通勤ラッシュに代表される東京のシティー・ライフを話して聞かせたら、本気で驚いていて「ぜったいに生きてゆけない」といっていたが、たぶんほんとうに生きてゆけないだろうなとおもった。というのも、わたしは以前かつての彼らの家に遊びに行ったときに、こころから驚いたことがあるのだ。大きすぎない平屋の素敵な家だった。それはいい、特別なことではない。問題はトイレに扉がないことだった。部屋の壁のくぼみにトイレはあって、音も匂いも筒抜けで、わたしはじつはかなりうろたえつつ、彼らがほんとうにワイルドな西部の人であることを知ったのだった。じっさいワイルドといえば、クレイグとジャッキーは蚊やアブに刺されすぎたあげくに、結果的に皮膚が反応しなくなって、刺されても痛くも痒くもないというのだから、「アンタら、モンタナの牛かい?」と悪いジョークのひとつもいいたくなる。

 クレイグと最近のフライフィッシング・ビジネスについてしばらく話したけれども、好調が持続しているようだ。これはボーズマンのリバーズ・エッジで働いているリック・スミスもおなじことをいっていたが、リーマンショック後の生存競争に生き残ったショップは、撤退した店が失った収益の受け皿になっているという。つまり市場自体は縮小していない。このあたりは日本のフライフィッシング事情とだいぶ状況が異なる。
 マシューズ夫妻のビジネス手腕は傑出している。ジャッキーは、お客さんはみんなわたしたちのフレンドだから、という。じっさい彼らとの再会を愉しみにウエスト・イエローストーンに毎年もどってくる釣り人もおおい。ふたり以外の店員も、なによりもフレンドリーであることを真っ先に意識するように指導されているにちがいなく、小売店における商売の基本をしっかり守っている、かなり古いタイプの店なのだ。
 先日も、60歳過ぎくらいの紳士がひとりでふらりと店に入ってきて「じつは仕事を引退したばかりで、フライフィッシングでもはじめようとおもってね。フレンドがともかくこの店に行けっていうから来たんだ」といった。
 クレイグは「わたしのいうとおりにしたら、今日中に一匹釣ることができる」と笑って返し、そのあとは自分が世界中に知られた釣り人であることを完全に忘れ去ってしまったかのように、一店員として真摯かつ丁寧に男性に接し始めた。その腰の低さといったら、彼がライズを目の前にしたマジソンの土手にひざまずくときと変わらない。商売と釣りを両立させることは簡単ではないけれども、クレイグ・マシューズはこうやって見事に生活とプライドの切り分けを行って、フライフィッシングを自分のものにしているのだ。
 その男性が頭の先から靴の先までをブルーリボンで揃えることを決めるのに5分とかからなかった。まちがいなく来年もクレイグに会いにくるな、とおもいつつ、話し相手を奪われたわたしは商売の邪魔をしないように、店を出たのだった。
 昔は夏のシーズン真っ只中であっても、朝9時を過ぎればのんびりしたものだった。通りの向かいにあるランドリーの洗濯機に洗濯物を入れてから、ブルーリボンに入ってコーヒーを飲みながらばかばかしい話をして愉しかった。今年は午前中はおろか、午後2時頃まではお客さんの波が引きつ戻りつするという。みんないつ釣りしてるのだろうか?
 with RX100 2012/6 West Yellowstone
by bbbesdur | 2012-08-12 17:00 | flyfishing

#575 表参道の紳士倶楽部_a0113732_1533793.jpg

 出張と研修の間隙を突くように、釣り仲間と会った。40歳から60歳まで、世代は2世代にまたがってはいるものの、フライフィッシングに対する狂熱はまったく変わらない。表参道の素敵なお店に集まったから、ぼくたちオジさん以外のお客さんは全員女性だった。コース料理が終わるやいなや、各自持ち寄った玉手箱(通称リチャードソンと呼ばれるフライ収納箱)を開陳して、フムフムと仲間の工夫を称え合ったが、そんな合間にも奥でこちらを気にしている若い女性たちの声が漏れ聴こえてきた。
「デザイン関係の……」
 釣り関係のオジさんと見破られることはなかったようだ。じっさいこのなかの2名はプロのデザイナーなのだから、彼女たちの推測も、悪くはなかった。
 じつはぼくらオジさんたちは、ちいさなフライフィッシング倶楽部を発足させようとしていて、この日は倶楽部ロゴを選定するための東京会議だったのだ。プロのデザイナーふたりの間に見えない火花が散ったようにおもえたが、無事落ち着きベきところに落ち着き、そこは紳士なのだった。ただいま東京の結果を大阪のオジさんたちに伝えて、大阪会議での決定を待っているところである。
 with XZ-1 2012/6 表参道
by bbbesdur | 2012-06-09 15:07 | flyfishing