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#231 雨の夜

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 つい今しがたのことだ。宿の入り口に三人の親子連れがいて、ゴミ捨て場で空き缶を拾い集めていた。ボランティアの清掃ではない。ボランティアはあんなに暗い目をしていない。真夜中に空き缶を収集しない。
 ぼくは彼らの背中にカメラを向けることができなかった。
 エレベーターに乗ったぼくは部屋の前までやってきて、ようやく後ろを振り向くことができた。もちろん7階の通路にはだれもいない空間があるだけだった。だからぼくはカメラを向けることができた。
 いまぼくは部屋にいて、この文章を書いていて、大粒の雨がバルコニーを叩く音が聞こえている。
 ぼくは雨に打たれる彼らをおもっている。
 ぼくと彼らは夜の闇を隔てて断絶している。彼らは憐れんでもらいたくないだろうし、ぼくも憐れみたくはない。
 だからぼくはただじっと夜の雨の音を聴く。
 それなのに気がつくと、ぼくのこころは飢えた肉食獣のように、夜のなかに潜む悲しみを嗅ぎ当てようとし始める。家族を不幸と決めつけて、悲しみたがっているのだ。雨の夜が悲劇を連想させるのはなぜだ。ただ夜に雨が降っていて、そこに空き缶拾いの家族がいるだけなのに。
 with D700 Sigma DG HSM 50mm/1.4
by bbbesdur | 2009-11-17 00:15 | okinawa