2009年 11月 14日
#230 大人の少年たち
<A「出たねえ」
(Aは少し前から噂にのぼっていたリコーの新型カメラGXRが発表されて、友人のBに電話している)
B「マイったなあ」
(Bが新型カメラが発売されて「マイっている」のは欲しくなる気持ちが抑えられなくなるからである。性欲にしても食欲にしても、この手の欲望はほとんど自分の理性との闘いなのである)
A「どうする?」
(Aはじつは予約特典のレザー・ストラップにつられてメールオーダーの注文ボタンをポチッと押してしまっているのだが、やはり他人の意見が気になっている)
B「まあ、現物を見てからでも遅くはないんじゃないかな」
(Bもじつはストラップの特典につられてポチッといきかけたが、景気減速によるボーナス25%カットをおもいだし、寸でのところで気持ちを変えたのだった。そもそもストラップは3600円なんだし、ほんとうに純正ストラップが欲しければ、発売後に値が下がってから買えばいい。最近のデジカメはすぐに値落ちするのだし。リコーはちいさな販売戦略ミスを犯したな。色、たとえば真っ赤のストラップを発売時限定にすれば、もっと予約客を囲い込めたかもしれないのに、とBはおもった)
A「しかしGXRはまたまた使い勝手を改善してるみたいだね」
B「DIRECT画面は前から欲しかったけど、なによりもパワーのオンオフボタンがスライド式になったのがいい。で、いちばん気になるのは露出決定の速度。せっかくスナップモードでAFのタイムラグがないのに、AEがもたつくんじゃ意味がないからね」
(BはGRD2からGRD3に買い替えてからAE速度が遅くなった気がしているのだ。レンズを明るくした弊害かもしれないが、背広のポケットから出して構えると、画面が真っ白から適正になるまでに時間がかかってしまい、シャッターチャンスを逃すことがままある。そのあたりがGXRではどうなるのかとても気になっているのだ)
A「ぼくはレンズかな、50 mmはいいとしても、ズームじゃなくて単焦点の28mmあたりを先に出して欲しかった」
(Aは24mmからのズームユニットが一般ユーザーのニーズに合っていることは承知の上で、撮像素子がGRD3とおなじおおきさであることに、ややがっかりしている。50mmユニットがAPSサイズ素子であることから、今後同様の素子サイズでの広角単焦点が出てくるだろうと期待しているのだ。だったら広角単焦点が出てから買えばいいのだが、気の短いAにその選択はできない相談なのだ)
B「そうかんがえると、いまのGRD3で事足りてるって気もするよなあ」
(Bはボーナス25%カットがなければ確実に買うだろう自分の気持ちを落ち着かせるためにそうおもいこもうと努力している)
A「ところでソニーが18日にミラーレスを発表するっていう噂、ほんとうかな?」
(Aはソニーが出すミラーレス一眼カメラは、まちがいなく裏面照射型CMOSセンサーを搭載してくるだろうとおもっていて、評判次第では、リコーのGXRをキャンセルしてもいいとおもっている。あるいは、オレはもしかして両方買ってしまうのだろうか、と自分の欲望に怯えてもいる)
B「例によって、信頼できる複数のソースってあるからなあ」
(じつはその複数のソースのひとりが身近な人物だと知ったらAは驚くだろうな、とおもって、Bはすこし興奮した)
A「もし裏面照射型でAPSサイズ素子だったら、ぼくの撮影用途にはばっちりなんだけどなあ」
(Aには深夜にだれもいない東京の地下通路や夜の街路で女性モデルのヌードを撮る趣味がある。しかしこういった事柄は変態的な嗜好という風に尾ひれがついて、人の耳に入りたがるものだ。だからAは自分のblogにはヌード撮影の合間に撮った都市の夜景しか載せていない)
B「そうか、君も夜の撮影が好きだったのか」
(Bも深夜にだれもいない沖縄の海辺や那覇の橋の上で女性モデルのヌードを撮る趣味がある。しかしこういった事柄は奇妙にねじ曲がった噂になって流れてゆくものだ。Bは噂の怖さを知っている。というのも、じつはソニーの新型カメラ開発陣のひとりにBの大学時代からの親友がいて、今月のソニーの新型カメラの発表が確定的であることは「ぜったいにだれにもいってはだめだ」という条件付きで内緒で知らされた。しかしBは我慢できずに海外のカメラ情報サイトに秘密を漏らした。複数のソースのうちのひとりとはBなのだ。しかしそのBも、ソニーの新型ミラーレスカメラが、裏面照射型の、それもじつは、フルサイズ素子であることは知らされていないのだから、噂とはあてにならない>
という話を昨夜、ぼくはCから聴いた。
with GRD3 2009/11/11撮影 那覇