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#211 那覇大綱挽

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 那覇大綱挽は久茂地交差点を境にして、東と西に那覇市を分けて大綱を引っ張り合う。国道58号線は午後3時ちょうどに閉鎖される。200メートルもある大綱を当日に運び込むのはやっかいな作業だから、前の晩にクレーン車が3台やってきて、綱を58号線のセンターライン上に置いてゆく。センターラインといっても、片側3車線の国道のことだ、中央にはコンクリートの分離帯がある。しかしこの部分だけはこの日のためだけに可動式になっているのだ。大綱引きの前夜、人々が寝静まった頃、分離帯はクレーン車で持ち上げられ、綱引きが終わる時刻までどこかに保管されている。ぼくとしては綱引きよりも分離帯の行方が気になるから、いつか夜中にやってきて作業を目撃したいとおもってはいるのだが、今年も前日に飲み過ぎてだめだった。なにしろ大綱引きは那覇祭りの中日で、だから前の日はいつだって前夜祭なのである。
 大綱引きの歴史は古い。なんでも琉球王朝のころからだそうで、でも当時はクレーン車とかはなかったから、綱はせいぜい牛が曵ける程度の長さだったはずだ。太平洋戦争前に中止され、復活したのが沖縄が日本に復帰する前年の1971年。立派な大綱が消えていた年月はそのまま沖縄の苦悩の時代と重なる。
 25分間結構激しく引っ張り合う。綱を引っ張っているのは住民やら観光客やら米軍兵やらその家族やらのその場限りの渾然一体チームだが、タイミングが合ったときは、声と動きにうねりのような波動が生まれて、見ていても興奮してくる。今年は引き分けだったが、いまのところ東西での勝敗は12勝12敗12引き分けだそうだ。大綱は綱引きが終わった途端に参加者に解体される。年に一回だけ、幻のように現れる大綱の切れ端を家に置いておくと幸福が訪れるというから、みんな一所懸命引き千切っては持ち帰る。
 with D700 Sigma 50mm 1.4(ほぼ等倍まで6x6トリミング) 那覇
by bbbesdur | 2009-10-12 21:59 | okinawa