2009年 08月 06日
#181 なぜぼくはGRD3を買うのだろう?(続アニタ・レイの呼び声 第4回は次回へ)

ぼくにとって、新しいカメラを買うという行為の最大の効能は写真を撮りたくなるという一点につきる。写真を撮りたくなるということは、つまりは良い写真が撮れるかもしれない、という希望/幻想が湧き上がっているということで、そんなこころの発動こそが創造の源泉なんじゃないかとおもうのだ。
ぼくのみじかくはなく、ただながいだけが取り柄のスナップ写真人生を通して自分自身で学んだほとんど唯一のことは、撮れば撮るほど良い写真の確率が上がるということだけだった。
カメラを新しくしたって、フィルムを変えてみたって、白黒にしてみたところで、高価なレンズを買い足したところで、おなじ撮影者が撮っているかぎり、出てくる写真におおきな差があるはずがない。なのに、買った直後になんとなく腕が上がったような気になるのは、つまりはいつもよりたくさん撮っているから確率が上がってるんだとおもう(投資による効果、あるいは買ったばかりのカメラ/レンズが優れモノと信じたい、という気持ちが目を曇らせている可能性は多分にあるとしても)。じっさい、この経験の連続によって技術は上がってゆくのだろうけど、肝腎なことは、撮ろうとする姿勢、撮りたいとおもう気持ちの変化なんじゃないかとおもう。
ぼく自身についていえば、スーツのポケットにカメラが入っていないときは、ほとんど良い(とぼくがおもう)写真が撮れない。バッグから取り出すという手間のかかる行為が、すでにしてチャンスを逃しているわけだけど、じつはカメラをバッグに入れた時点で、撮る気持ちが薄いわけで自動的に撮影枚数もすくなくて、だから良い写真は撮れないという連鎖に陥る。
GRD3は素晴らしいカメラだ。上の写真は21時半過ぎに撮ったもので、GRD2では明暗のグラデーションは決してこういう風には出なかった。ぼくのようなスナップ写真愛好者にとっては、あまたあるコンパクトカメラのなかでのベストカメラだといいきれるな。GRD2を使っていて不満だった点(株式会社リコーへの手紙に書いたおおくの点)が改善されている。ほんとうに美しい仕事だ。なんだか、ぼくはもう自分がRICOHの競合メーカーの社員であることなんてどうでもいい気になっちゃった。良いカメラは良いカメラだよね。日産の社員でプリウスに乗っている人と話がしたい気分。唯一の問題は価格も最高という部分だろう。ニコンだとD90が買えちゃう。だけど、これは仕方がない。スーツ姿で毎日D90をぶら下げて通勤するわけにはいかないからね。
with GRD3 2009/8/5撮影 こどもの国駅前