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水仙とシジミ汁

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「水仙」という太宰治の短編に、シジミ汁の貝肉を食べるのはあさましい、と男の主人公が若く美しい女性画家に軽蔑される場面があった。印象的なエピソードをつないで物語を進行させる太宰らしい構成の短編だが、ラストシーンにいきなりでてくる水仙の画(女性画家を投影しているとおもわれる)よりもシジミのエピソードの方が、いまとなってははるかに強く記憶に残っている。水仙の方は創作で、シジミは太宰の実体験だから、じゃないかなあ。
 太宰にハマっていた学生の当時、ぼくには小説を実学的に読むわるい癖があって、作家が書くことをそのまま鵜呑みにしていた。だからその小説を読んで以来、ぼくはシジミ汁が出たときでも、シジミの肉を食べなくなった。でもいまだにわからないのです。しじみの肉を食べない理由が。もともと貝は雑菌の巣みたいなものだ。シジミは淡水に棲む貝だから、さらに衛生上好ましくないだろうことはわかる。でも、もうすでに煮汁を吸ってしまっている人が、そのお椀の底にのこった肉を食べたところで、いまさらどうなるわけでもないともおもう。
 太宰は自身を「津軽から出てきた田舎者」と規定していて、それがために猛烈な東京コンプレックスと闘うことになった。シジミの話はまさしくその核心的なエピソードなのだが、いまどきは地方の方が食材はずっと安くて新鮮なのだから、地方の人が食べているなら、いまさらながらではあるけれども、ぼくもそれを真似たいとおもうんだけど、どうなのかな?(RICOH GR blog トラックバック企画 ほんわかに参加しています)
 with GRDII 2009/4/5撮影 自宅付近
by bbbesdur | 2009-04-12 19:29 | flower