2021年 11月 11日
#755 Montana Brothers Rodworks 最終回


上 : Doug Daufel 下:Dan Daufel
グラファイトロッドをそもそもの初めからスクラッチで開発するとなると、カーボンシート設計から始めて、マンドレルを発注し、業務用の冷蔵庫で冷やしたカーボンシートをカットし、丸めてマンドレルに巻き付けて焼き付けるというブランク製造過程が必須だが、それは専業のグラファイトメーカーのやることで、MOSTLY BAMBOOにも書いたが、その工程をすべて自社でやっているのは、日本ではカムパネラくらいしか思い当たらない。もし自分でブランクを製作できないとすると、グラファイト加工業者に「こんな感じで」というような発注の方法になる。そこから始めて、自分の思ったアクションに到達するためには、加工業者との無限の行ったり来たりが必要で、それをやるにはそれなりの予算が必要だし、何よりもテキトーなところで妥協しない強い意思が必要だ。この無限の行ったり来たりを、10数年間、執拗に繰り返したのがこのふたりで、その結果として今回のロッドがある。正直なところ、私は本当に完成するとは思っていなかった。
今、私の手元にあるのは、ポール・ブラウン設計のワールドクラスがベースになった904Lだが、もう少し一般向けにテーパーを調整したモデルがひとつあるということだ。そっちは振ってないので、どんなアクションかわからない。
904Lのアクションは極めて独特で、最初に書いたように、ヤワなロッドが好きな日本のベテラン・フライフィッシャーは絶対にハマる。バンブーロッドで言えば、ビアーネ・フリースのヌードルだが、それをグラファイトで実現しているところが凄まじい。バンブー素材の9フィートのトラウト用ライトロッドで、私が実釣で使えると思った竿はこれまで一本もない。世界は広く、ネッシーだって、U F Oだって、雪男だっている可能性はあるが、イエローストーンで一週間ぶっ通しで振り続けることのできる9フィートのバンブーロッドがこの世に存在しないことは確かだ。だからこそMontana Brothers Rodworksのこのロッドは私にとって唯一無二のロッドになると思う。柔らかいのに、もたつかないし、9フィートなのに軽い(これはグラファイト・ロッドとしては珍しくはないかもしれない)。
何よりも、特徴的なのは、自分のキャストが見えることだ。マズいバックキャストをすると、そのマズさが、そのままラインに現れるし、逆もある。その現れ具合がなんというか、とっても素直かつ繊細なのだ。自分自身では客観的に見えていないキャストを、ループにして可視化しているようだ。こういうリスポンスのロッドはバンブーであっても少ないし、多くのグライファイトはマズいキャストを勝手にスピードアップして、リカバリーしてしまうから、自分のキャストの悪さがわからない、だから進歩がない。逆に言えば、キャストに自信がない人には、ロッド側にバックアップしてくれる気がサラサラない、冷たいロッドに思えるかもしれない。
F1レーサーが車幅にしてミリ単位でステアリングを調整するように、このロッドは微細にキャスターの意図を汲み取ったプレゼンテーションを可能にするだろう。
9フィート4wtというスペックが日本のどこの、どういった釣りにマッチするのか、私にはよくわからない。私自身ではこのロッドを日本で使うことはないように思える。逆にイエローストーン、特にヘンリーズ・フォークで釣りをする日本のフライフィッシャーにはこれ以上に薦めたいと思うロッドはない。自分の腕の延長が欲しい人には無条件で薦める。
親しい友人が作ったロッドというのは、自分でも意識しないまま、ひいき加点をしてしまうものだ。そう言った点で、このレビューは100%正確ではないかもしれないが、90%は正しいと思ってる。実際アメリカのベテランフライフィッシャーの間で、このロッドがかなり話題になっていることは事実だ。そもそも専業じゃないので、製作本数も限られている。現時点で半年から8ヶ月のバックオーダーだけれども、もし興味があれば
へ連絡してみてください。ホームページはまだありません。実は価格も聞いてません(笑)!