2021年 11月 06日
#754 Montana Brothers Rodworks その2
イエローストーン周辺で釣りをするなら、どうしたって長めのロッドに分がある。日本の一般的な渓流に比べるとはるかに川幅が広く、流れが重い釣り場が多いからだ。だから地元のショップや多くのガイドブックは9’00 5wtの(グラファイト)ロッドを薦める。それでも私は何とかバンブーロッドを使いたいから、ムリを承知で7’6” 4wtという選択をしてきた。7’9”以上は重いし、5wtにするとさらに重いからだ。1日、2日程度なら何とかなるが、1週間そのロッドで通せと言われると厳しい。普段日本の渓流(北海道を含めて)で感じることのない7フィート半ロッドの手返しの悪さに辟易するのだ。ともかく疲れる。
実はサラリーマン時代、勤続30年のリフレッシュ休暇なるものを利用して、人生で初めて夢のイエローストーン1ヶ月滞在というのを敢行したことがあったが、3週目の後半に身体に異変を感じた。ロッドを振ると背中の右側に痛みが走り、呼吸が苦しくなった。ブルーリボンのジャッキー・マシューズ(クレイグの奥さん)にエニスにいるカイロプラクティック施術師を紹介してもらったが、結局治らないまま帰国の途に着いた。帰国して整形外科に行ったら、筋肉痛ではなく疲労骨折と言われた。骨折するまでロッドを振るなんて。私はフライフィッシングに全人生を賭けている自分を愛おしく思った(爆)。
それ以降、イエローストーンで使うロッドには、結構気を遣っている。バンブーロッドで通したいのはヤマヤマだが、思い通りにいかないことがわかっているシーンで、我を通そうとしてもロクなことはない。私も歳と共に丸くなったらしく、ヘンリーズフォークやマジソンでは素直に9フィートのグラファイトロッドを使うようになった。
でも本当はイヤなのだ、グラファイトロッドのあの無用な反発力が。なんだかキャストしている気がしないのである。だからといって長めのバンブーロッドをこの歳で振り回していると、疲労骨折じゃ済まなくなるかもしれない。フライロッドを振れない時間は、そのまま人生の浪費である。
だからDoug& Danから、現実的には入手不能なポール・ブラウンの名竿ワールドクラスのコピーロッドを作っていると聞いたときには、将来が明るくなった気さえした。すぐにでも欲しかった。でも知っている、世界は私中心に回ってはいないのだ(信じられないことに!)。傍目には製作は遅々として進まず、かなり難航しているように見えた。作っているという話を聞いてから5年経っても、完成する気配はまるでなかった。というのも、彼らは専業じゃないから、週末と夏休み以外はそうそう時間が取れない上に、もちろん釣りに行かなくてはならないのだ。信じられないことには、ふたりとも堅気の銀行マンなのである。その3につづく。