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#745 ショパンコンクール ステージ2 その3

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 心のポーランド(東京)でもお米作ってます(笑)!

 昨日は日本の実家に用事があったので、一旦心をポーランドから帰国させた。時差の関係で、昨夜のセッションをようやく今日の午後聴くことができたが(お昼のセッションはまだ聞いていない)、これまでで一番聴き応えのあるセッションだった。前半の3人、みんなイケてる。やっぱり日本人は日本の、ヨーロッパ人はヨーロッパの、アメリカ人はアメリカの、それぞれの民族の底にある音楽(文化や教育など含めて)が身体に流れちゃってるもんだなあと改めて感じた。


Yasuko Furumi

・ポロネーズなかなか聞かせる。自信があったから、あえて一曲目に持ってきたんだと思う。

・やはり前回書いたように、彼女の音楽はできあがっていると思う。しかし相当弾き込んでいる痕跡があって、猛烈な練習量なんじゃないだろうか。ストイックそうに見える。寝る時間を惜しんで練習するタイプとみた。こういう人は評価されてしかるべきだ、とひいきしたくなる。

・ショパン的だし、審査員好みの演奏だと思う。わたしにはちょっと真面目すぎるけども、音楽は素晴らしい。

・ダイナミックレンジの広さはフツーだと思うが、強弱とテンポでじっさいよりも大きな音楽に聞こえる。

・音色の深みがかなりいい線までいっているが、「はっ」と驚くような瞬間は多くない。

・ポロネーズ・ファンタジーを弾いた人は、わたしが聞いた中では初だったが、新鮮で、素晴らしい演奏だった。

・自分のステージをひとつのコンサートと考えた選曲と曲順にセンス、そして「わたしの音楽を聴かせる」という意思を感じる。

・ネコのワルツも繊細さがあって可愛い。Kyohei Soritaの演奏より猫がはっきり見える。

・バルカローレ、とてもいい。ピアニズムから距離を置いて、わたしはあくまでも子守歌を弾いているんです、と宣言しているように聞こえる。

・曲の雰囲気や背景が表に出てくる感情豊かな演奏だが、自分勝手なエモーショナルな揺らぎがないから安心して聴いていられる。

・でもこの人、なんでもない不思議なところでミスをする。なんだかムダなミスのように感じるが、彼女の集中のバランスがそういう風にできあがっているんだろう。練習の量が多いように感じるのは、このミスを削り取るためのものかもしれない。

・この2次はクリアできたはずだが、3次が正念場になると思う。


Alexander Gadjiev

・登場時になんとなく客席がざわめいているのは、期待されているからか?

・選曲に自分のコンサートにしようという意思が感じられる。

・なんだかとてもヨーロッパを感じる。

・ピアノを弾く技術がスゴい。それでもKyohei Soritaの方が技術的には上だ。

・弾くとなんでも音楽になってしまうような驚くべきセンスがある(つまりこういうのを天才的だっていうんだと思う)。うーん、どうしてもこのふたりを比べたくなる。おそらくファイナルはこのふたりを中心にした争いとなるだろう。鋼鉄のようなSoritaの演奏にはない、ヨーロッパの哀愁やら空気感をこの人の演奏に感じる。そのヨーロッパ的な香りが審査員を酔わせるような気がしてならない。

・弱音の高音域の音の美しさはとても印象的だ。

・いろいろな音色を持っていて、自在に引き出しから出してくる。

・一音一音がはっきりしている。しっかり弾き切れている。メロディアスな部分でも、しっかり左手が歌うべき低音で支えている。

・個人的には直前でYasuko Furumiが弾いたバルカローレを徹底的に子守歌とした解釈が好きだが、いかんせん技術力がちがいすぎる。

・ミスはまあまああるが、目立たない。というか、不思議なことにはミスがあるから、なんとなく安心する。まだ伸びしろがあるから、新人コンクールにもふさわしいと思わせる。まさかわざとやってないよね? と思わせるくらい落ちついた演奏をする。

・弾き終わると次の曲を楽しみに待っている自分がいる。

・パーカーフェイスで、どこかしら人を食ったような顔つきをしているが、音楽は優しい。

・バラードもいい。極めて印象的な静けさだ。しかし、中間部からのこれほど激烈なパート、この曲にほんとに必要なのかね、ショパンさん?

・とてもコンサート慣れしているように見える。Kyohei Soritaと同じようにすでに現役で活躍しているような気がする(自分の感想に余分な先入観が入り込むのは困るので、演奏者に関するGoogle検索は一切しないことにしている。コンクールが終わって、いろいろと演奏者のことを調べるのが待ちきれない)。

100%確実に最終選考まで進む。


Avery Gagliano

・アメリカ人の女性演奏者。今回初めだ。

・音がとてもキレイだ。技術的にもとても安定している。

・遅めのバラードのテンポが独特だ。

・バラードが不必要にドラマティックにならないように、ならないようにと努力している様子がわかる。

Alexander Gadjievを聴いたあとだからか、ヨーロッパの香りゼロだ。日本人の演奏者に近い。

・聞こえてくる音楽の粒が比較的大きい。優しいが繊細とは少し違う。

・弱音の静けさのなかで、いまひとつ音楽が緊張を孕んでいない。

・ダイナミックレンジが大きい方側に触れていて、弱音側にやや狭く、音楽世界の広がりに欠ける恨みがある。

・なんだか難しいことを言わないサロンミュージックを地で行っていて、それはそれでショパンらしいとも思うけれども、ことわたしに関して言えば、音楽に求めているのは耳触りの良さではなく、精神的な安寧や沈潜なので、いまひとつピンとこない。でも、変ホのポロネーズの出来はかなりいい。精神的な深みは一切感じないが、音楽の出来はとてもいい。

・ミスの少なさは驚くほどで、間違いなく参加者一だ。これは全曲ともに、テンポをやや遅めに取っていることと関係があるとは思う。この正確さが彼女の最大の持ち味だろう。

・カーネギーホールで拍手喝采が止まないっていう光景が目に浮かぶ。やっぱりアメリカ人って繊細な方向には進まないんだなあと、改めて思った。

・3次に進むと思う。


by bbbesdur | 2021-10-12 15:30 | music