2021年 10月 05日
#740 ハレルヤの衝撃
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昨日の朝、いつものようにSpotifyでDaily Mix1(Spotifyが勝手に「アンタはこれらの曲が好きなはずだ」と選んでくれるパッケージ)を聴いていたら、聞き慣れた旋律が流れてきた。最初は「あれっ、ヘンデルってハレルヤの管弦楽バージョン作ってたんだ」と思った。冒頭のハレルヤの合唱部分はなく、いきなりユニゾンの低音域で歌われる「For the lord god omnipotent reigneth」の部分が始まり、フーガで重ねられていく。自分が作曲した楽曲のテーマを変奏曲風に別の曲に仕立て上げるのは、ベートーヴェンがエロイカの主題でやっているように、珍しいことではない。あるいはブラームスのように『ハイドンの主題による変奏曲』なんて、堂々と別の作曲家のテーマを借用して自分の作風に改造するなんてこともままある(でも、じつはその肝腎の主題がハイドン作曲じゃないという説があるらしいことを、今回いろいろ調べて初めて知った)。
だからヘンデルも、あのあまりに有名なハレルヤの旋律を利用して、2匹目のドジョウを狙ったんだと思った。で、Spotifyを見たら『Fuga con un soggetto solo in D Major』とあった。そう言われてみれば、確かにフーガにふさわしいテーマのような気もしてくる。「ふーん」と思って、作曲家の名前を見ると「アルカンジェロ・コレッリ」とあった。「アレッ、コレッリがハレルヤのテーマを使ったのか?」と思って、調べたら、何と逆だった。ヘンデルがコレッリの旋律を使用していたのだ。正直なところ、これにはかなり驚いた。そもそも年代的にコレッリの方がかなり先輩で、ヘンデルはコレッリから多大な影響を受けたらしい(このあたりのことはすべてWikipediaからの受け売り)。そっか、これって、オレだけが知らないクラシック音楽の常識だったんだ、と思って、いろいろ調べたけども、ネット検索ではあんまり引っ掛かってこない。そもそも『Fuga con un soggetto solo in D Major』という曲が相当にマイナーだ(サクソフォン・カルテットの編曲バージョンになってしまいますが、ここにあります。https://www.youtube.com/watch?v=qjPxsMEUX9Q Spotifyでは私が聴いた演奏しかしか出てこない)。調べるといろいろ知らないことが出てきて、自分の知識がいかに表層的であるかがよくわかる。クライスラーに『コレッリの主題による変奏曲』なんていうのもあって、聴いてみたが、どこをどう聴いても100%クライスラーに聴こえる。
しかし、まさかあのハレルヤにコレッリの旋律が紛れ込んでいたなんて、朝っぱらから、かなりの衝撃だった。作曲された時代では、ああ、あれはコレッリのね、と当たり前だったことが、いつのまにか忘れ去られて、ヘンデルの旋律になってしまうところが怖い。しかし怖いと言えば、この埋もれた曲を「アンタが好きなはずだ」と選んでくるSpotifyの方が怖いかもしれない。