2019年 03月 18日
#713 RICOH GRデジタル3 「ブレるんです」返上 レビューその3 (手ブレ補正)
富士フイルムからXF10が発売されたとき、価格の安さに思わず気持ちがぐらつきましたが、富士のコンパクトのAPS-Cカメラの前モデルであるX70から進化した点がほぼ0だったので見送りました。進化0というよりも、価格以外は改悪だったと思います。X70をスナップカメラと認識していたユーザーは多かったと思います。なによりもバリアングル・ディスプレイが良かった。それをなくしてただ薄くしたXF10はどんな購買層をターゲットにしているのかわからない、中途半端さが半端じゃないカメラになってしまいました。富士フイルムは頻繁に旧機種のファームアップをして、旧機種の機能をアップデイトする良心的なカメラメーカーだとは思いますが、顧客の声を聞いているかといえばそうでもなくて、開発者が自分たちのこだわりを押し付けているようなところがあります。これは身内だからこそわかる体質で、一刻も早く変化して欲しいと思っています。
その富士に比べると、今回のRicoh GRデジタル3は、しっかりとユーザーの声を聞いて課題をひとつひとつの解決してきたことがわかるカメラです。その改善点の最たるものが、今回搭載された手ブレ補正機能です。あの小ささでまさかとは思いましたが、噂通り手ブレ補正を組み込んできました。手ブレ補正は、わたしの目下のメイン機であるX-T3にもついていません。でも、まあそれはそれで良いんです。一眼カメラは、しっかり構えるものなので、めったに片手では撮りません。それでも微細なブレはいつだってあるから、補正はあるに越したことはないのですが、まあどうしてもというならX-H1に行けば良いので、それはいいことにしています。でも富士で言えばXF10、その前のX70、リコーでいうならGRとGRデジタル2はスナップ用途で使うことも多いため、片手撮影をすることが多いはずなんです。できれば両手を使いたいけど、なかなかそうもいかない。たとえば森山大道が両手で撮ってる姿って、それっぽくないでしょ。
で、APS-Cセンサーを積んでいるこれらのコンパクトカメラは、じっさいブレます。油断すると1/60でもブレます。「換算28mmの1/60でブレるなんて腕が悪いんだ」と言うあなた、試しに街中で、さっとGRをポケットから出して、片手でカシャっとやってみてください。スナップシューターのためのカメラ、というのがGRシリーズのコンセプトですが、あれはセンサーサイズをAPS-Cに変更してからは真っ赤なウソです。かなりの確率でブレます。あの小さなボディでAPS-Cだと、しっかり構えないとブレるんです。かつての富士フイルムが「写ルンです」なら、GRは「ブレるんです」と言いたい。森山大道ですら、スナップが撮りにくい時代になったと嘆くほど、街中でカメラを構えることが難しくなった今、シロートがサッと取り出して、パッと撮って、それがブレていなかったら大したものです。APS-Cになってからの初代GRは解像感は素晴らしかったけど、逆にそれだけブレも目立ちました。わたしはスナップ撮影が生命線のGRがセンサーを大きくするというまちがった路線に進んでしまったと思い、一年足らずで売却しました。それからはGRデジタル2が出ても、見向きもしませんでした。富士でもリコーでも、ともかくAPS-Cのコンパクトカメラに存在意義はないと思うようになりました。そんななかでもどうしてもサブカメラにはコンパクトカメラが必要なので、SONY RX100mk6を導入したんです。あのカメラは手振れ補正機能は付いていますが、あんまり実感できません。でも、画質が……と、ウジウジしている最中にGRデジタル3の噂が流れて、手振れ補正が付くというから驚いたんです。富士がXT-3の筐体でも入れられない機能を、センサーが同じ大きさのGRの、あのちいさな中に入れてしまうなんてありえない、と。で、現実的にその手振れ補正機能が備わったこのGRデジタル3ですが、メッチャ効きます。もう感動するくらいに効きます。いろいろ試しましたが、しっかり構えれば1/8くらいまでは頑張れます。しっかり構えず、サッと片手でやると、1/15が厳しいくらい。1/15あれば街中でも十分です。いやあ、こんな小さいボディでAPS-Cでまあまあイケてる手ブレ補正付き、素晴らしいカメラだと言いたいけど、まあ欠点もあるから、それは次回以降に。
<まとめ>
手振れ補正機能95点 ほんとうにリコーの開発者は、よくぞここまで追い込んだと思います。敬服します。素晴らしい仕事です!