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#712 RICOH GRデジタル3 レビュー その2


わたしは使わないものはどんどん売っていきます。無駄遣いであることは重々承知していますが、この浪費癖は治りそうにありません。昨年末で定年退職しました。毎月の収入がなくなったら、さすがのオレでも爪に火を灯す暮らしぶりになるだろうと期待していたのですが、案に相違して手元にはまだ退職金が残っていて、これまで以上に気持ちが大きくなっているという最悪の状況にあります。そういう自分を「空襲警報が鳴っているのに耳栓をしてホッと安心している人物」という風に感じています。楽観的な男は楽観的なまま死んでいくしかないのでしょう。バカは死ななきゃ治らないんです。
ところで初めにお断りしておきますが、浪費癖というのはつまるところ「見る目がない」ことの証明みたいなものですから、いままさに皆さんが読んでいるこのレビューは、見る目のない人物による無駄遣いの記録みたいなものです。ハッキリ言えば、いま皆さんは「見る目のないレビューワーによる新製品レビュー」を読んでいるわけです。それってレビューの価値があるでしょうか? まさしく時間の浪費だから、手早く切り上げた方が身のためです。じっさい、レビューを読んでいるはずが、前フリだけに2日も付き合わなくてはならないのですから。もしこんな暇つぶしのブログを読んでいながら「いやー、ちょっと急いでるんだけど」という方がいらっしゃれば、今すぐにこの記事の最後から8行目の<本日のまとめ>を読んでください。それが今日の記事の中で唯一価値のある情報ですから。
カメラに「所有する喜び」とか「モノとしての魅力」を感じないと言うとウソになりますが、これだけ製品開発サイクルが早いとフイルムカメラ時代の恍惚感を味わうことは困難です。その昔、カメラを買いに中野に行くと決めた前日の夜は興奮してなかなか寝つけませんでしたが、この頃の通販でポチッとやるだけの行為はまるで興奮を伴いません。電車に乗って都心までカメラを買いに行くことをしなくなってから、購買行為にドキドキ感がなくなって、ちっともセクシーでなくなりました。同時にカメラ自体もセクシーでなくなったような気がします。
大丈夫です、まだ今自分が書いているのがGRデジタル3のレビューであることは覚えています。覚えているといえば、皆さん、風呂に入っていて、自分がシャンプーしたかどうかを忘れてしまうことってありませんか? そう聞くと、いままで「そうよね、ホント最近わたしも忘れっぽくって、阪東さんだけじゃないわよ」と調子を合わせていた人物が「えっ」と引いてしまうのです。あるいは、目が覚めて起きたとき自分が誰だかわからなくなっていることってない? と聞くと、ほとんどの人が病人を見る目つきを向けてきます。でもじっさいわたしは頻繁に自分が誰だか忘れていました。あまりに頻繁に起きたので、だんだん慣れてきて(と過去形なのは最近その現象が起こらないからですが)焦らなくても絶対に思い出すからじっとこのまま寝ていればいい、と自分に言い聞かせて安心することができるようにさえなりました。池澤夏樹の『マシアスギリの失脚』という長編小説に、まったくおなじ経験をする登場人物が出てきますが、わたしにはものすごいリアリティでした。たぶん池澤夏樹も同じような経験があるのではないかと勝手に想像しています。風呂場の記憶喪失はあまりに頻繁なので、だいぶ以前にリンスインシャンプーに変えました。
「あのさー、いい加減に無駄話を止めて、レビュー初めてよ!」
昨日書いたように、買ったばかりのカメラを批評する人物の目は、確実に曇っています。だからその曇りを取るための時間稼ぎをしているのです。わたしは自分のカメラ浪費癖の長い歴史の中で、何度も成田離婚を繰り返しているんです。羽田発着の国際線も増えたので、羽田離婚と呼んでも良いと思いますが、離婚したくて結婚する人はいません。いずれにしてもカメラを買ってしばらくはアバタもエクボのハネムーン状態がつづくことが多いんです。とくにルックスが良いと、騙されやすいから注意しないといけない。
このままだと、一切具体的なレビューがないまま、第2回が終わってしまいそうなので、最後に、ひとつだけ言っておきます。
起動がメチャンコ速い! です。今もわたしの手元にある旧GR3がパワーボタンを押してカメラが撮影可能になるのが「ジー――」だとすれば、新しいGRデジタル3は「ジッ」です。「ジー」の「―」はありません。ウソのように機敏です。アブラゼミの断末魔みたく「ジッ」の一瞬芸です。これは箱を開けて、バッテリーを充電して、まず最初に経験した驚きでした。でも、起動が速ければ良いってもんじゃない。これはわたしがだいぶ以前に、センサーが小さかったGR3のレビュー#483 FujifilmX10とRicoh GRD3の比較 その1書いたことですが、スナップ目的メインのカメラであるならば、パワーボタンを押してレンズが繰り出されたら、すぐにレリーズできないと意味がありません。前のGRDⅢはたとえレンズが繰り出されても、AEが遅いために撮影可能になるまでに2、3秒のタイムラグがありました。2、3秒というのはスナップシューターにとっては永遠の時間です。スナップカメラは東洋大の酒井監督の言うように「その1秒をけずり出せ」なくてはならないのです。その点、今度のGRデジタル3は見事です。素晴らしいの一言です。APS-Cになった初代GRは購入1年以内に売ってしまったので、いまここで比較できませんが、けっしてこんなに速くはなかった。この早さはフイルムカメラ時代と遜色がないんじゃないかと思います。最近CONTAX Tシリーズがなぜか大人気だそうですが、もし手元にT3がある釧路のMさんのような方がいらっしゃれば、ちょっとやってみてください。高級コンパクトカメラの起動って「ジッ」でしたっけ? このくらいの過去は覚えてなくてもフツー、って安心してもいいですよね?

<本日のまとめ>
・起動が早い→95点 マイナス5点のうち3点は「ジッ」の「ッ」を無くす開発努力をつづけて欲しいというわがままな思いで、もう2点は「ジッ」の音にまだ改善点があると思うからです。音もほんとうにだいぶ良くなりましたが、さらに無音、もしくは「心地よい音」に近づける努力をして欲しい、という願いからです。なので、決してこのマイナス5点はネガティブなものではありません。

次回はなぜ3ヶ月前まで富士フイルムグループ社員だったわたしが同じ換算28mmのコンパクトカメラであるXF10を買わずに(社員割引さえあるのに)GRデジタル3を買ったのか、あたりの話から入る予定なので、たぶん具体的なレビューはまた一つくらいになっちゃうと思います。それでも良ければ、つづきもお付き合いください。ではまた明日(たぶん!)。

by bbbesdur | 2019-03-16 15:58 | camera