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#627 暗くなるまで待って(Sony RX100散文レビュー最終回)

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 RX100はコンパクトカメラとしては最大の1インチセンサー(APS-Cサイズセンサーを採用したシグマのDPシリーズをコンパクトカメラと呼ぶかどうかについては議論の余地があるでしょうが、ぼくについていえばFUJIFILM X10での経験から、ポケットに入らないカメラはコンパクトじゃないと規程して、衝動買いを自制しています)を搭載しているだけのことはあって、画質に不満はありません。なによりも悪条件に強いところが気に入ってます。カメラ雑誌やWEBで高級コンパクトカメラ比較なんてのをやりますが、光の条件が良ければ大差ないんですよね。RX100は面積比でいうとX10の倍のセンサーを使っているのに、Lightroomでぱっと見る限り、あんまり違いがわからない。しかし条件が悪い時のハンドリングの良さと出てくる画の品質に違いがあります。
 スナップ撮影は、ほんの一瞬の勝負のことが多くて、構図とかなんとかよりは、現実的にはブレとの闘いです。相手に気づかれないようにポケットから①「出して」、②「構えて」、③「撮る」、という3拍子のリズムを心掛けているのですが(これが狂うと、なぜか気づかれます。経験からいって、速度よりはリズムが重要なようで、一連の流れが自然だと気づかれにくいんです)、いつだって②の「構えて」が難関です。 たいがいの場合こちらも歩いているので、 どうしてもしっかりと身体が止まらない。急に止まると気づかれるし、止まらないと確実にブレる。森山大道みたいに、ジャンパーなんて着ながらだと目立ちにくいはずですが、ぼくの場合、ビジネススーツでこれをやるから気づかれたときにサラリーマンの盗撮じみてしまうんです。そんな心配が頭の端にあるから、「構えて」のときに身体が止まっていないことがおおい。必然的に撮影された画像は微妙にブレていることおおく、未熟ぶりを知るわけです。だからあんまり等倍で見たくはない。早い話が臭いものにはフタをする、というわけですが、スナップ写真って、それがある程度許されるジャンルじゃないかとおもいます。画質よりも、タイミングがプリオリティだとおもうんです。
 これは以前も書きましたが、東京という土地はじつはスナップ天国みたいなところです。ただし画になりやすいところほど光の条件が悪いんです。ぼくは東京の核心は地下道にあるとおもっているのです。というのも外とちがって、人は限られた通路内を歩くしかないので、つまりは被写体の密度が濃いわけです。ですが、なにしろ暗くて良い写真が撮れた試しがありません。f8あたりでパンフォーカスを狙うなんてことは不可能で、地下道ではかならずといっていいほど被写体ぶれとカメラぶれのダブルでブレてしまいます。だから明るいレンズで、素早いオートフォーカスで、高感度に強いカメラが欲しいんです。
 といようなぼくにとっては、悪条件でもそこそこがんばってくれるRX100はいまのところ最善の道具ではないかとおもっています。GRDのようなスナップ写真撮影への本気度はまるで感じられませんが、各々の機能が優れているため、結果的にスナップカメラとして使える機材になっているとおもいます。
 といいつつ、心の中では、来年の夏前後に出るであろう、GRD5を心待ちにしているというのがほんとうのところです。目立たないように電源ボタンのライトのオフさえ出来るGRD、距離を決めたワンプッシュレリーズが出来るGRD、地味なスタイルと絶妙なグリップを持つGRDに流れているスナップ魂は、他のメーカーには見いだせないものだから。でも、ともかくあの撮像素子は古すぎます。どうせどっかから素子を買うんだったら、ソニーからRX100とおなじやつを買って、なんとかがんばって使えるカメラにして出して欲しいな!
 with RX100 2012/6 サンフランシスコ (最近の記事を振り返ってみましたが、じっさいほとんど室内、夜、ガラス越し、といった難しい状況で撮っていることに、改めて気づきました。条件が悪いところで、もうすこしだけでいいから美しい画にしてくれるカメラが欲しい!)
by bbbesdur | 2012-12-16 23:47 | camera