2012年 12月 15日
#626 大は小を兼ねない(SONY RX100の連載レビュー その2)
RX100最大の欠点はホールディング性である。
NEXシリーズ以来、ソニーの開発陣はカメラ本体を小さくすることに異常な執念を持ちつづけている。RX100はいわゆる高級コンパクトカメラであって、NEX開発陣とはまったく別の組織が担当したはずだ。しかしフルサイズのRX1同様、今のソニーにはなにがなんでも限界まで小さくしなくてはならないという号令が掛けられているようで、RX100も(もう見慣れたとしても)異例にちいさい。ちいさいだけなら作るのは難しくないのだろうが、高品質の画を追求しつつ小さくするのは至難だとシロウトのぼくにもわかる。
デジタルカメラが普及し始めて10年以上が経過した今この時点でも、撮像素子の大きさと画の品質の比例関係を逆転させるブレイクスルーは実現していない。かなりいい線まで来ているが、いまのままの技術の延長線ではムリだと思う。あっと驚く発明が必要とされているのだ。
だからいまのところ高品質の写真を生成する最も有効な手段は、カメラにおおきな高画素撮像素子を搭載することでありつづけている(高画素化の良し悪しは語られ尽くされているのでここでは繰り返しませんが、ついこの間まで1,000万画素で必要十二分といっていたぼくのようなユーザーが、涼しい顔をして3,600万画素超のD800を買っています。技術ってそういうものだし、シロウト考えの先を行くのが技術者の心意気というものです)。撮像素子が大きくなると、あらゆるカメラパーツが大きくなるし、なによりもレンズの直径が大きくなる。レンズが大きくなると必然的にカメラは大きくなる。トーゼンの結果として原価がかかる。
コンパクトカメラに与えられた命題は小ささである。コンパクトでなくてはコンパクトカメラではないって、当たり前過ぎてシャレにもならない。使い手にとっての「コンパクトさ」は女性ならバッグに入れて邪魔にならない、重くならない。男性なら、上着のポケットに入る、というあたりの大きさだろう。
で、スナップ写真撮影が好きなぼくの場合、上着じゃなくて、シャツのポケットに入るサイズが理想なのです。取り出しやすさから行っても、横幅がそこそこあって、高さはない方がいい。iphone4ではなくて、iphone5の縦横の比率。でもって、肝腎の出てくる画は「コンパクトカメラとは思えない」くらいがいい。
簡単にいえば、「プロ用一眼レフ+大口径レンズをポケットに収まる大きさにして欲しい」のだ。だからユーザーはワガママで困る、というメーカー開発者もいるだろうけど、この前書いたように、フィルム時代にはそのワガママがまかり通っていたのだから、Good Old Daysを知っているぼくのようなユーザーとしては、決して高望みとはおもっていないのだ。
じっさいRX100は限界まで撮像素子を大きくして、限界までサイズを小さくした、極めてわかりやすいコンセプトの元に開発された製品である。
それなのに、RX100レビューのblogの冒頭に、
「RX100最大の欠点はホールディング性である」
なんて書くヤツがいるから、開発も辛い。って、オマエが辛くしてるんだろうが!
で、今日のレビューはどこまで進んだかと読み返してみたら、一行目から先に進んでいないのだった。まあ、のんびりコツコツ書くレビューってのもあっていいでしょ。また明日!
とここまで書いて読み直しましたが、いくらなんでもこれはあまりに不親切すぎる。昔のアニメ「巨人の星」でさえも、1回の放送で一球くらいは投げたものね。だからもうちょっとだけつづけます。
えー、と、ホールディング性が悪いのは、小さいからというよりは、必要以上に小さくしているからだ。小さくすれば良いというものではない。すこしはRICOHがGRDで完成させた持ちやすさに近づいて欲しい。大きめのラバーグリップの膨らみの曲線だけで、どれだけ持ちやすくなるかとか、横幅があった方がかえってバッグやポケットから引っぱり出しやすい、とかのユーザーのハンドリングについての研究が足りない。ここは前々回の記事で書いた一目惚れの部分に繋がるけれども、ルックスに惚れるとこういう天罰が待ち構えている。ソニーの開発陣も「良いデザイン」と確信して先に進んだにちがいない。じっさいソニーらしいシャープかつ優雅な、線の細い日本的な素敵なデザインだとおもう。旦那芸みたいなRX1ならそれもいいだろう。あれは「趣味の世界です!」って宣言しているようなものだから。でも、ユーザーがRX100のような高級コンパクトカメラに求めているのは、美しさよりも機能なんです。ポケットから右手で取り出して電源を入れて、片手でさっと撮れるカメラがいいんです。はい、両手で構えるのが撮影の基本であることは百も承知です。でも、現在は昔とは社会状況がちがうんです。カメラを持っているだけで「盗撮している!」って疑われる、ぼくのようなスナップシューター受難の時代なんです。昔は思いもつかなかったブレ防止機構もあることだし、片手で3秒以内に撮りたいんです。それなのにRX100は若々しい面構えをしていながら、構えたときにグリップが効かずにツルっときて、老人みたいに左手の介添えが必要だから困っちゃう。
だから仕方なく、ぼくはこういうのをつけています。ホールディングが体感で50%くらいアップして、片手で撮れるようになります。リチャードに直接オーダーすると、格安の国際メール便(400円くらい)ですぐに送ってきます。デザインのセンスは抜群で装着違和感0%です。ソニー内部にこのくらいのこと考える人がいて欲しいな。
というわけで、ここらで、ほんとうにまた明日!
with RX100(ISO800) 2012/12 那覇国際通り入り口(内地からやってきたフォトスクールの一群がいて先生が教えていたけど、やっぱこの位置が教科書どおりということだろうな。