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#624 エア・ギターの夜

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「またBeatlesかよ!」とぼくの話を聞かされる皆さんは飽きているかもしれないけど、聴いているぼくとしては飽きるどころか、ますます没入してゆくのが「ABBEY ROAD」で、今日の帰路に、また新たな発見をしてしまった。というか、ティーンエイジャーの頃にはクラシック音楽なんて知らなかったから、気づくはずもなかったし、今回こんなに繰り返して聴いているというのに、うっかり者のぼくは、今日の今日まで、ついさっき通勤電車で聴くまで、「I Want You(She’s So Heavy」が変奏形式をもった楽曲であることに気づかなかった。
「I want you」というフレーズを繰り返しつつ音程を下降させて行って、ジョンは最低音を歌い切れてない。そのあとの「She’s so heavy」のheavyの高音域も辛そうだ。男声が歌うには広すぎる音域を持った曲だが、その苦しさがとてつもなく「お前が欲しい」状態の私の心情、というかこの場合ストレートに若い男の性欲、を表現していて、単純な繰り返しによる変奏曲形式も男の欲望のあり方にふさわしいし、最後に延々とつづくインストルメンタルが、突然途切れるところも、欲望のカタストロフィにふさわしい。で、ここまで書いて気づいたけど、このLP、A面もB面も、唐突に千切れるように終わっていたんだ! ほんとうにこのアルバムでビートルズって、おしまいだったんだ。あーあ、なんという無知、お気楽リスナーだったんだ、わたしは!
 しかし「 I Want You(She's So Heavy」が低音(=男の性欲だとおもいます)を強調しつつ唐突に終わって(この終わり方が1969年8月20日のリミックス作業中のジョンの「そこで、切れ!」という指示だったことはこの本の305ページに書いてあります。凄い本です)、すぐに流れ出す「Here Comes The Sun」のギターのなんと清々しいことか。ジョンとヨーコの性欲まみれの夜が終わって、丘の向こうに現れた太陽のどれだけ眩しいことか。ふたりには付き合ってられないよ! という当時のジョージの気持ちがそのまま現れたような繊細なイントロには聴く度にマイってしまいます。昔はここがA面からB面にひっくり返すタイミングだったから、夜が来て、朝が来る間に、聴き手は必ずレコード・プレーヤーまで歩いていて、その間の時間の経過も織り込み済みだったはず。しかし今回CDのA面とB面が繋がった状態で聴いてみて、時間の経過などという理屈はともかく「Here Comes The Sun」の出だしは「 I Want You(She’s So Heavy」との落差のためにLP時代よりもはるかに効果的になったとおもう。リリカルここに極まれり、という感じで、ソロギターが朝日の影を伸ばしてゆくのです。
 ところでビートルズの歌詞って、ちゃんと聴いたことありますか? まさか「I Want You(She's So Heavy」が性欲の歌だからといって「彼女が欲しい、でも彼女は重い」って訳して聴いてませんよね? そういうお茶目な間違いを犯しがちなぼくは、今回のBeatles回帰に際しては、家で聴くときはきっとこの本のページを開いて、「ふーむ。そうだったか!」と唸りながら、自分でも信じられないことには、じつはときどきジョージに成り変わって、エア・ギターやってます。誰にも見せられない姿だから、部屋を閉め切ってやってるけど!
 with RX100 2012/12 広島
by bbbesdur | 2012-12-12 01:22 | around tokyo