2012年 08月 11日
#577 明日に向かって振れ
モンタナに釣りに行って、それがひと月間の長きに及べば、帰国したときにはほとんど釣り廃人とでも呼ぶべき存在になっているのではないか、と危惧していたのだった。
けれども成田にもどってきたときに気がついた。
――仕事も悪くない。
まさか自分がそんな気持ちになるなんて、出発時にはおもいもしなかった。釣りが愉しくなかったわけじゃない、そんなことがあろうはずもない。じっさい釣りそれ自体についていえば、1ヵ月ではまるで足りなかった。当たり前だ。釣りの世界には、
――釣り人は二度とおなじ川辺に立つことができない。
という名文句があって、つまりは川は毎日変わる、という事実を語っているのだが、じっさい前の日に入れ食いだった川が、翌日に釣れなくなるという事態は日常的であり、たとえ1年365日、毎日釣りをしても、なお足りないのである。 冷静に過去を振り返ってみれば、釣れない日の方がおおいのが普通だから悲観的になっても良さそうなのに、釣り人はきっと暗い過去を振り捨てて、明るい明日に向かって竿を振る。
というような日常、つまりは毎日を楽観的に過ごすということだけど、ひと月間繰り返すとどうなるか?
釣りをしていないときにも楽観的になるのだった。仕事中のわたしの頭のなかにも、未だモンタナの風が吹き、頭上にはモンタナの青空が広がっている。いつかはこの脳内ビッグスカイにも暗雲が忍び寄るだろうが、そんなときにも嵐のあとには必ず眩い一日が訪れると信じられるような気がする恥ずかしいほどポジティブないまのわたしなのである。
with E-M5 12-50/3.5-6.3 On the road/Dillon to Twin Bridges Montana