2011年 11月 01日
#481 富士フィルム 散文レビュー その2
①大きさがいい。
そうぼくが勝手に宣言したところで「オレは手が大きくて、X10は扱いにくい」という使用者もいるはずだ。そもそも人間の手の大きさってあまりに個人差がありすぎる。それでもぼくはFujiFilm X10最大の美点はおおきさだといいたい。衣類やスポーツ用品を除くと、ほとんどのモノは使用者の身体特性にかかわらず最大公約数的なおおきさで製作される。カメラにしても、手が大きい欧米人用にNikonD3やCanon1Dがあって、ちいさい日本人用にPentax Qがあるわけじゃない。機能が先にあって、使用者にサイズとウエイトへの対応を要求するのだ。モノが優先されて、人がアト回しっていうのは気に入らない。ほんとうはカメラにだってサイズがあったほうがいい。X10/XS、X10/S、X10/M、X10/L、X10/LLとか。でも、ほんとうにそんなことしていたら製品開発期間はながくなるし、生産ラインは種類の分だけ必要だし、結果的に販売価格は数倍に跳ね上がってしまうだろう。
あるいは世界中のカメラの90%以上が日本の企業によるものであることをぼくたち日本人は幸運とおもわないといけないのかもしれない。もしNikonやCanonがアメリカ企業だったら、アメリカの衣服を通信販売で購入したときにがっかりする異様な袖の長さとおなじような感覚を、カメラで味わなくてはならなかったかもしれない。
いずれにしても一種類しか作れないモノの大きさというものは工業製品デザインの核心であり、あらゆる可能性があるなかで、X10をあの大きさに落ち着かせた富士フィルム開発陣のセンスに感心している。
あの大きさがセンサーサイズや手ぶれ防止機構などのハードウェアを組み込む都合から逆算して出来上がったのか、あるいはともかくこの大きさでやるんだ、というコンセプトがあって、ああなったのか気になるけれども、ともかく「手に持って気持ちのいいカメラ」ってそうそうあるもんじゃない。金属感や重みが手にしっくりきて、良い写真が撮れる気がしてくる(この錯覚はモチベーション上きわめて重要だ)。今日、寄ったヨドバシカメラでX100と並べてあったが、パッと見にはさほど変わらないのに、持ってみるとX10のコンパクトさが際立つ。
しかしそれでもスナップカメラとしては、やや大きい。背広のポケットには入るが、ワイシャツのポケットには入らない。その点ではこれまで使いつづけてきたGRDシリーズの大きさがいい。気づかれないように写真を撮るにはGRDくらいの大きさがいいのだ。さっと取り出せて、さっと撮り、さっと仕舞うことができる。おそらくX10は基本的には首からぶら下げて使うカメラだ、ライカ風に。どちらのスタイルが合っているかは、撮影者次第だろうが、ぼくはスナップ撮影の手順についてはGRDに慣れ過ぎているから、X10では光学ファインダーもあることだし、別なアプローチが必要だとおもう。
with Fijifilm X10 八戸港 2011/10