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#480 富士フィルム X10 散文レビュー(その1)

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 キミも買ったんだってね、富士フィルムX10。X100は買って一週間で売っちゃったから、富士には見切りをつけたんだとおもっていたけど、そうじゃなかったんだね。
 ああ、たしかにそうだね、操作感にもったりしたところがなくなったものね。ぼくはビックカメラで100回くらい触ったけど、X100に関しては、結局、買いたいという欲望が盛り上がってくることはなかった。理由ははっきりしていて、スナップカメラ風でありながらすべてが遅い点と、ぼく自身が35mmという画角に苦手意識があるからだった。
 X10が発表されたとき、じつはガッカリしたんだ。ズームに手を出してはいけない、とおもっていたからね。明るい単焦点だからこそフジノンレンズの個性が際立っているわけで、暗いズームにした途端に、中途半端なカメラになってしまうとおもった。X100の次はクラッセや中判のフィルム機時代にそうだったように、ワイドバージョンであるところの28mmのレンズのついたX100Wを出すべきだ、とおもったし、このblogにもそう書いた
 でも富士フィルムはそうしなかった。その理由はとてもよくわかる。ズームの方が万人ウケするから市場が広がる、つまりたくさん売れる可能性があるからだ。もともと富士は出身が感材メーカーで、ながらく消費材を扱ってきたために数をさばくことこそがビジネス上の最重要要素であるといった企業風土がある。「写ルンです」なんかがその最たる例で、カメラそのものを感材として販売するという芸当をやってのけた。カメラを使ったら捨て、また使うときに新しいものを買ってもらうわけで、開発の発想そのものが凄かった。
 よりおおく売れそうな商品を作るという戦略は、いまどきのメーカーの基本中の基本で、売れなくてもいいから後世に残るような優れた商品を作る、なんて余裕のあるメーカーはいまや絶無である。
 X100の次の商品を、さらにマニア向けの28mm単焦点のX100Wにするか、ズームのX10にするか、という選択肢を前にして、富士フィルム内では議論があったはずだ。
 結果的に、より一般向けのズーム搭載機X10に決まったが、いかにも富士フィルムらしい選択だった。ぼくがマーケティング、あるいは開発陣にいたら、ぜったいに反対していたな。
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 この方向性が正しかったかどうかが、いままさに問われているんだけど、はたしてX10はかなり出来のいいカメラで、売れるとおもう。ヒット商品というよりも、ホームラン級の商品になるとおもう。わかってるよ、ぼくは、自分の負けを認めるさ。だって、富士がズームでこんなに明るいレンズが作れるっておもわなかったし、あのトロいX100をおもえば、それほど日が経っていないのに、こんなにキビキビした操作性が確保できるとはおもいもつかなかったんだ。ユーザーの声をあえて聴こうとしない富士としては上出来だよ。
 しかし正直なところ、新しいカメラを買って興奮したのはかなり久しぶりだな。最近はやたらと買い過ぎていたせいか、新しいカメラに不感症になっていた気がする。昔は買う前に毎晩のようにカタログを眺めてはあれこれ思いを巡らし、仕事をサボって昼間からカメラ屋に行ってたものね。CONTAXのG2限定ブラックやニコンのF5を買う前の日なんて、興奮のあまり食事が進まなかったし、寝られなくて困った。これはおおげさではなくて、ほんとうのことなんだ。
 新しいカメラに興奮しなくなった最大の理由は、なんといっても製品のサイクルが早くなって、自動的に購入インターバルが短くなったせいだとおもう。人間なんでも慣れてしまうと新鮮さを失うもので、じっさいあんまりサイクルが早すぎるために、劇的に性能が向上することもない。ちょっと良くして買い替えさせるというメーカーのマーケティングにやられちゃっているわけだ。まあ、メーカーとしても、競争に負けないためにこまめに新製品を出さぜるを得ないわけで、騙して売っているということもないとおもう。じっさい開発陣は死に物狂いだとおもうな。開発費だってそうとう絞られているだろうし。
 ということで、例によってながい前フリになってしまったけど、次回は何が良くて、なにが悪いかを、まあたった一週間程度の使用ではあるけれども、X10の感想を具体的に書くつもりです。
 with FujiFilm X10(JPEG撮影後、いっさい手を加えていません。写真をクリックするとおおきくなります)2011/10 自宅
by bbbesdur | 2011-10-30 18:02 | camera