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#475 マニュアルの向こう側

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 今日ぼくが乗った長崎発羽田行きのフライトには、2名のフライトアテンダント研修生がいた。空席がおおく、新人研修にはもってこいのフライトだった。
 離陸前のチェックの際に
「お客様……」
 とめずらしく声を掛けられて振り向くと、ほとんど同時にどこからともなくもうひとりのフライトアテンダントが現れて、無言でぼくに声をかけたフライトアテンダントの前に立ちはだかった。目を釣り上げて、ものすごい威圧感があった。
 ぼくに声を掛けたのは新人だったようで、隣りの座席に置かれたビジネスバックを見て、座席の下に置くようにいいたかったらしい。けれどもぼくはいつもするように、バッグの把っ手にシートベルトを通して固定していた。上の棚に入れるよりもずっと便利だから、隣りが空いているときはいつもそうしているのだ。
 新人には固定されていことが、わからなかったらしい。教官か、先輩かの、猛烈な無言の威圧で彼女は自分の失敗を悟った。ぼくは、
「研修中だものね」
 といって場を取りなしたが、先輩か、教官かは、ぼくにはなにもいわず、新人も「お客様……」 と後には、ひと言も発しないまま、去って行った。
 先輩か、教官かが、新人に教えるべきは、「バッグを固定した乗客には声をかけない」なんていうマニュアル的なことではなく、「新人のミスを乗客に丁寧に詫びる姿勢」だったはずだ。「たいへん失礼いたしました、新人なもので」とでもいってから、新人に、ぼくに聴こえるように「バッグが座席に固定されている場合は……」とかなんとか、やった方がよほど自然だ。そうすればいつかあの新人が先輩になったとき、その姿勢を真似ることができたかもしれないし、すくなくともぼくに殺伐とした印象を与えなかったとおもう。
 with GRD3 2011/10 東京湾から富士山を遠望
by bbbesdur | 2011-10-20 20:24 | west japan