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#440 夕暮れの自問

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 昨年の冬、「山に登ってイワナを釣りたいんです」と先輩釣り師を誘ったら、「じゃあいっしょに行こうか」ということになって、今年の夏の終わりに決行が決まった。
 いっしょに行く仲間のひとりがFACE BOOKに準備室を作って、詳細を見たら、行き先はK川だった。ぼくとしてはもうすこしお気楽な、ハイキング程度の話をしていたつもりだったから、驚いた。K川は名にしおう北アルプスの険谷であり、屋敷でもないのに廊下が表や裏にあって、泳ぎながら渡渉したりする玄人のための川である。
 じつは若い頃は、こんな軟弱なぼくでも山に登っていたのだ。上高地から槍ヶ岳、大キレット越えの奥穂高への縦走なんてのもやった。しかも山小屋ではなく、テント泊で。娘が生まれた年、ぼくは山にも登らず、釣りにも行かず、ひと夏を家族のために逼塞して過ごした。娘が生まれたのが7月で、渓流釣りが禁漁となる直前の9月の終わりごろ、いくらなんでも耐えられず、八ヶ岳登山と釣りを兼ねた1泊2日の単独行を計画し、主峰の赤岳に登って頂上小屋に泊まるつもりが、釣りがしたくて、いてもたってもいられなくなり、頂上にタッチした瞬間に下山した。それがいけなかった。下山途中に膝が笑い出し、しまいには悲鳴を上げだし、降り切ったときにはもう一歩も歩けなくなった。
 そのときの失敗によって、ぼくの右膝は長時間の酷使に耐えられなくなったが、それから年月は22年進み、その間にちょくちょく山歩きはしたが大丈夫だった。しかし、今回は登山開始地点から標高にして1,000メートル登って、400メートル下り、歩く距離は11キロである。
 果たして、ぼくはほんとうに参加するのだろうか、と自問しているうちに決行がひと月に迫った。いまなお、ぼくはほんとうに参加するのだろうか、と自問しているのだが、自問しているだけでは、とってもマズいような気がして、 近所のメガロス・スポーツクラブの回数券を買って、今日からトレーニングを開始した。10時ごろから自転車に乗ったり、マシンを使って筋肉を鍛えたり、ランニングマシンに乗ったり、いろいろやって、昼過ぎにもどってきて、へろへろになって、あんまり疲れたから昼寝をして、いまさっき起きて、ぼくはほんとうに参加するのだろうか、と自問している。そろそろ日も暮れてきたから、ビールでも飲みながら自問してみることにする。ビールで結論が出ないようであれば、ワインに変えてみるのも手かもしれない。
 with LX2 2006/9 乗鞍岳
by bbbesdur | 2011-07-24 17:10 | flyfishing