2011年 02月 03日
#386 究極のデフォルメ
料理は芸術的でありながら、目指しているのが美しさではないから芸術と認定されることはない。見た目の美しさが味覚を幻惑させるところなんてまさしく芸術そのものなのに。
そもそも芸術というのは、生活に直接役に立たないからこそありがたがられる。役に立とうなんていう志が低いことはかんがえちゃいけないのだ。 絵画や音楽や文学はどれだけ現実の役に立たずに美しく成り立つことができるかを競っているフシがある。すべからく退廃であり、不健全であり、だからこそ人は魅惑される。
それにひきかえ、料理はどうだ。美しく彩られた料理は、食べる直前の一時だけのためにあり、アートは一瞬にして文字通り、いけにえのごとく、人の口のなかに消えてしまうのである。一瞬前まで芸術を構成していた各素材は腹のなかに入るや、一転、臓器を元気づけ、血となり、肉となって、明日を生きる原動力となるのである。その結果として生み出される残滓を、ぼくは究極の芸術的デフォルメと呼びたい。
先日沖縄のうるま市にある無名の料理達人宅へ呼ばれ、じつに芸術的な料理をご馳走になって、そんなことをおもった。あんまりおいしくて、食べ過ぎて、ついでに飲み過ぎて、翌朝、ぼくは盛大にゲイジュツした。
with GRD3 うるま市 SKさん宅