2010年 05月 11日
#330 母の日の翌朝に
Yへ
今朝は泣いてしまって、わるかった。オマエはとてもしっかりとしていた。泣き崩れないようにしているのか、あるいは失ったばかりで実感が湧いていないのか、わからなかったが、オマエは苦しそうだった。それがオレには辛かったんだ。お互いの母親のことについて話した記憶などないが、オマエは母親のことをいっさい語らず、しかし母親を愛していることを伝えることができる男なのだろう。
きっといまごろオマエは自分がやってきた数々の親不孝を悔いている真っ最中なんだろう。でもな、心配するなよ。オマエの親不孝があってこそ、かえって彼女は愛情を注ぎ込む喜びを得ることができたんだ。心配するなといっても心配する、息子の幸せを本人の倍喜ぶ。悲しみも倍悲しむ。きっとそれが母という生物の宿命なんだ。知っているか、ハサミムシの母親を。彼女は自分が生んだ卵を独力で守り抜いたあげくに、孵化した無数の子供たちに食われて死んでゆくんだ。
男3人兄弟全員に看取られて、オフクロさんは幸福だったとオレは信じてる。
しかし、誰もが死ぬんだな、Y。オマエ、いつかオレにいった言葉覚えてるか?
死ぬのが怖いというオレに、オマエは「ばかだなあbbbesdur、眠るのとおんなじだよ。ただ朝が来ないだけなんだ」といったんだ。今でもオレはオマエのその言葉に救われているよ。オフクロさんも、いまはただ眠ってるんだ。長い間悩まされてきた病気から開放されて、ようやくゆっくり眠ることができているんだ。オヤジさんもさぞかし待ちくたびれたことだろうな。ようやく親不孝者たちから開放されて、ふたりでのんびりしているだろう。
宮崎からもどったら連絡してくれ。ふたりであらためて通夜をやろう。もう泣かないからだいじょうぶだ。オマエといつも行く新宿2丁目で飲んで、ふたりで泣いていたら、どうしたって疑われるからな。ホラ、元気出せ、なんていわないから、すこしは笑えよ!
with GRD3 2010/5/9撮影 実家