2010年 04月 28日
#322 那覇のパパイヤの怪
沖縄でパパイヤを果物として食べた記憶がない。熟していない青い実を炒めて食べる。沖縄でパパイヤは野菜であって、果物ではないのだ。昭和の終わりごろに「君たちキウイ・パパイヤ・マンゴーだね」と歌った歌手がいたけど、じつはパパイヤとマンゴーでは、まるで格がちがう。侍女の差し出す日傘に入りながら「今日も暑いわねえ」とつるつるの額に汗を浮かべているのが真夏の女王マンゴーなら、おなじ瞬間に、アパートの玄関からサンダルをつっかけて八百屋に出かけるのが庶民のパパイヤである。
マンゴーは宮古島産のものが近頃の人気で、7月の旬に食べると、ほんとうに頬が落ちるくらい甘い。でも高い。めちゃくちゃ高くて、1個2千円から3千円くらいで売っている。でもパパイヤはスーパーの野菜コーナーで、じゃがいもの隣りに置いてある。
ところで、パパイヤを巡って、近頃、那覇市で不可解な現象が起きているから調査して欲しい、と依頼を受けた話はしたっけ? 那覇市のあちこちで、なぜかパパイヤが歩道脇の植え込みに植えられているというのだ。那覇市が、自分たちが管理している土地に、ひときわ地味で、樹高も人の背丈ほどで、花だって小さくて(写真)見栄えもしない樹を植えるとはおもえない。だれが、だれのために植えてるのかが不明なのだ。もしかしたら単一の犯人が無賃の敷地でゲリラ栽培を行っているのかもしれない、とぼくは推測した。人知れず植え、人知れず収穫し、人知れず売っているのではないか?
あるいはほんとうの政治的ゲリラ集団の仕業か。辺野古沖に予定されている米軍基地に反対して、県民大会に集まった人々にパパイヤをひとつづつ配るのだ。沖縄の平和的精神が、石ではなく、頭に命中しても怪我をせず、かつその日の夕飯になるパパイヤを投石ならぬ、投果実するのだ。もし米軍が放水作戦に出たら、落ちたパパイヤから芽が出て、沖縄はパパイヤジャングルになる。そうなればしめたものだ。米軍はベトナム戦争中に熱帯ジャングルのゲリラ戦で痛い思いをしているから、たちまち沖縄からの撤退を決め込むにちがいない。
さらなる調査が必要とされていたが、マンゴー1個に満たない調査費用が底をついてしまい、ぼくは東京へもどった。
with GRD3 2010/4/20撮影 那覇