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事情あって、年末から一人暮らしをしている。
2週間スーパーの惣菜だけで暮らしたある朝、気がつくと虫になっていた! というようなカフカ的なことは起こらなかったけれども、少なくともキリギリスになったかもしれないと思うほど野菜を欲している自分の身体に気づいた。じっさいなんだか経験のない不思議な具合の悪さで、どうにも説明がつかなかった。たぶん本能的に問題を察知したんじゃないかと思う。とりあえずお昼に駅前の王将に行って、肉野菜炒めと餃子のセットを食べた。味は相変わらずの王将だけど、ともかく野菜がとっても美味しくて、身体に沁み入っている実感があった。午後にたまたま鱒やの橘さんから電話があって、夜はレバニラ炒めにするよう指示を受け、方法を教わり、その通りに作った。さすが宿のお客さんに美味しい料理を供する人のアドバイスだけあって、簡単で美味しくて、なんでこれまで料理しなかったんだろう、と反省した。その日から、回鍋肉、八宝菜とチャレンジしつづけ、昨日の昼は前日に残った八宝菜とペヤングのハイブリッドにした。で、夜はちょっとサボってクックドゥーのエビチリにした。人は慣れるとだんだんラクをするようになるという普遍的定理をうまく利用している味の素という会社は必要悪だと思った。それはともかく問題は、エビは死ぬほど好きだけど、ネギは死ぬほど嫌い、というぼくの絶対矛盾的自己同一問題をどう処理するかだったが、どこかの中華料理店でエビチリにレタスが入っていたことを思い出し、思い切ってレタスを丸ごと一個入れた。そんなに不味くはないが、美味しくもない、でも簡単。やっぱり味の素の味で、ひとつ先の中継点でタスキの受け渡しを待っているスーパーの惣菜の姿が見えている気がする。
しかし聞き慣れているから気づかなかったが、よくよく考えてみれば味の素ってすごい名前の会社だ。味の、素だ、と一方的に宣言されると、そっか、そんなもんかな、という気になってしまうではないか。GEやGMに匹敵すると思う。
それはとにかく、たぶん1週間分くらいは繊維とビタミンを体内確保できたはずだから、今夜は久しぶりにスーパーで大好物のイカゲソフライを買って、ポテチとベビースターラーメンで堕落する予定。
あっ、ついでに宣伝させてください。『ライフ・イズ・フライフィッシング シーズン1』完成しました。ふらい人書房の刊行本は幼児から老人までが愉しめる内容ですが、ときどきR18的表現が含まれるため、今後コンビニでは販売できなくなります。ふらい人書房提携フライショップ、全国各書店、ふらい人書房ONLINEにて予約中で、2月15日全国一斉発売です。



# by bbbesdur | 2019-01-24 18:00 | around tokyo

#708 白バラの誤解


 ついにこの日がやってきた。ほんとうに待ちに待ったこの日が、ほんとうにやってきたんだ。スーツを捨てる日。この日が来るのをわたしはどれほど待ちわびていただろう。サラリーマンの象徴、セールスマンの象徴である、スーツ、ワイシャツ、ネクタイ御三家とおさらばする日を、わたしは一日千秋の思いでカウントダウンしつづけ、とうとう今日のこの日がやってきた。囚人がストライプの囚人服を着るように、わたしはスーツを着て長いサラリーマン人生を、ほんとうに長々しいサラリーマン人生を送った。それが終わる。ほんとうに終わる。年末の大掃除のついでにすべてを捨ててしまおうと思ったとき、わたしはアウシュビッツに捕らえられたユダヤ人が、終戦を迎えたときにドイツ兵を見ただろう思いでスーツとワイシャツとネクタイを見た、ほとんど敵意を持った陰険な目で。その瞬間だった。わたしは今まで敵だと思っていた彼らを誤解していたことに気づいたのだ。ほとんど唐突に
理解したのだ、彼らが敵ではなかったことを。敵どころかじつは戦友だったのだ。地下に潜行して、この日が必ず来ることを信じ、何食わぬ顔をして社会的な活動していたレジスタンスたちを、わたしは完全に見誤っていた。ゴメン、ほんとうにゴメン。わたしはあまりに浅はかだった。目先の辛さが耐えられないからと言って悪態をつき、当たり散らす相手がいないからと言って、キミたちのせいにしてきたわたしが愚かだった。明日12月30日は今年最後のゴミの収集日だ。これはリサイクルには回せない。きっともう疲れ果てていると思うんだ。このまま安らかに眠らせてあげたい。死に装束ではないけど、最後にこれまでの元気な姿で写真に撮ろうね。そう思ってセットアップをして、カメラのファインダーを覗いた時、信じられないことに、ほんとうに信じられないことに、退職金で買った新しいカメラのファインダーが曇った。我ながら信じられなかった、わたしは泪を流しているらしかった。ほんとうに、これまでこんな愚かなわたしを守ってくれてありがとう。ほんとうにありがとう。心から感謝している。さようなら。


# by bbbesdur | 2018-12-29 23:59 | around tokyo


 ふらい人書房の最新情報をアップデイトさせていただきます。昨日からの各メディアの報道のとおり『釣り人の理由』は第159回芥川賞候補となりましたが、これもご愛読いただいた日本の読者の皆様のバックアップあってのことです。ふらい人書房を立ち上げたばかりではありますが、早くも出版社を畳んで専業の小説家となる日が近づいてまいりました。

 そこで小説家として文筆業に専念するため、ふらい人書房の本拠地をモンタナに移すことを決断いたしました。移転先はマジソンリバー$3ブリッジからボートで下流に10分ほどの川沿いで、素晴らしい自然環境のもとで、芥川賞などというちっぽけな賞ではなく、ノーベル賞受賞へ向けた下準備を始めようと考えています。

 これまでお世話になった読者の皆さんに対する感謝の気持ちを具現化するべく、完成間近のふらい人書房の新社屋をこの夏、特別に一般開放することにします。新社屋は1階が24時間365日、IPA飲み放題、ビーフステーキ食べ放題のパブになっており、川に張り出した広大なデッキからは上流下流に向かって自由にフライフィッシングが行える絶好の環境です。2階には日本から来られる皆さんがぐっすり快適に眠れるよう36畳の日本間に日本式布団を、そしてもちろん「痔の話」ご愛読の皆さんを裏切らない最新型のウォシュレットを全室に完備したリバー・サイド・ライズ・ビューの個室を10部屋備えています。ご利用ご希望の方は、弊社ホームページの特設サイトで予約日をご指定いただければ、極力ご希望に添うようアレンジさせていただきます。なにとぞ今後ともふらい人書房をよろしくお願いいたします。



# by bbbesdur | 2018-04-01 20:10 | flyfishing