人気ブログランキング | 話題のタグを見る

#740 ハレルヤの衝撃


<閲覧注意:写真は記事の内容とは一切関係がありません。フライフィッシング関係の方はここから先は読まないでください(笑)!>

 昨日の朝、いつものようにSpotifyDaily Mix1Spotifyが勝手に「アンタはこれらの曲が好きなはずだ」と選んでくれるパッケージ)を聴いていたら、聞き慣れた旋律が流れてきた。最初は「あれっ、ヘンデルってハレルヤの管弦楽バージョン作ってたんだ」と思った。冒頭のハレルヤの合唱部分はなく、いきなりユニゾンの低音域で歌われる「For the lord god omnipotent reigneth」の部分が始まり、フーガで重ねられていく。自分が作曲した楽曲のテーマを変奏曲風に別の曲に仕立て上げるのは、ベートーヴェンがエロイカの主題でやっているように、珍しいことではない。あるいはブラームスのように『ハイドンの主題による変奏曲』なんて、堂々と別の作曲家のテーマを借用して自分の作風に改造するなんてこともままある(でも、じつはその肝腎の主題がハイドン作曲じゃないという説があるらしいことを、今回いろいろ調べて初めて知った)。

 だからヘンデルも、あのあまりに有名なハレルヤの旋律を利用して、2匹目のドジョウを狙ったんだと思った。で、Spotifyを見たら『Fuga con un soggetto solo in D Major』とあった。そう言われてみれば、確かにフーガにふさわしいテーマのような気もしてくる。「ふーん」と思って、作曲家の名前を見ると「アルカンジェロ・コレッリ」とあった。「アレッ、コレッリがハレルヤのテーマを使ったのか?」と思って、調べたら、何と逆だった。ヘンデルがコレッリの旋律を使用していたのだ。正直なところ、これにはかなり驚いた。そもそも年代的にコレッリの方がかなり先輩で、ヘンデルはコレッリから多大な影響を受けたらしい(このあたりのことはすべてWikipediaからの受け売り)。そっか、これって、オレだけが知らないクラシック音楽の常識だったんだ、と思って、いろいろ調べたけども、ネット検索ではあんまり引っ掛かってこない。そもそも『Fuga con un soggetto solo in D Major』という曲が相当にマイナーだ(サクソフォン・カルテットの編曲バージョンになってしまいますが、ここにあります。https://www.youtube.com/watch?v=qjPxsMEUX9Q Spotifyでは私が聴いた演奏しかしか出てこない)。調べるといろいろ知らないことが出てきて、自分の知識がいかに表層的であるかがよくわかる。クライスラーに『コレッリの主題による変奏曲』なんていうのもあって、聴いてみたが、どこをどう聴いても100%クライスラーに聴こえる。

 しかし、まさかあのハレルヤにコレッリの旋律が紛れ込んでいたなんて、朝っぱらから、かなりの衝撃だった。作曲された時代では、ああ、あれはコレッリのね、と当たり前だったことが、いつのまにか忘れ去られて、ヘンデルの旋律になってしまうところが怖い。しかし怖いと言えば、この埋もれた曲を「アンタが好きなはずだ」と選んでくるSpotifyの方が怖いかもしれない


# by bbbesdur | 2021-10-05 10:28 | music

#739 PeakFinderというアプリ_a0113732_13492069.jpg


前回のつづきの前に、上の写真のアプリ知ってる? PeakFinderというスマートフォン用のアプリで、iphoneを山に向けると見えている山の名前と高さを教えてくれて、かつそのアプリ内にあるカメラ機能で撮った写真に文字情報を重ねてくれる機能が楽しい。家の近くの山であっても名前さえあれば表示してくれるし、日本に限らず世界で使える。他にも「AR山ナビ」とか「PeakVisor」などがあるが、わたしはモノトーンでシンプルなPeakFinderのデザインが好きで愛用している。


シートゥーサミットのアルト 1 プラス(非メッシュモデル)の総重量はミニマム重量が1,056グラム、総重量が1,335グラムだ。テントの重さを語るとき、ミニマムウエイトと総重量のふたつがあるからややこしい。重量表記はメーカーによって異なっていたり、一方しかなかったりするのでわかりにくい。どのメーカーがやり始めたのか知らないが、軽く見せるためのやり方で、車で昔あった10モード燃費と似ている消費者不在のあざといやり方だ。まあ両方明記されているからウソではない。でも、ペグがないと設営ができない非自立式テント、もしくは半自立式の場合はミニマムウエイトに乗せるべきだと思う。

というわけで、総重量が1キロを優に超えているこのテントは軽量ではあっても、今どき超軽量とは言えない。それでもわたしの使用方法ではぎりぎり重量制限内に収まっていると思ってリュックに入れて担いでいった。重さと耐候性(寒さに強い)はいつだってトレードオフの要素で、こればかりはじっさいにやってみないとわからない。

で、結論だが、このテントは緯度の高い寒冷地でも秋までは十分機能するだろうことがわかった。十分な保温性がある一方で、結露は一切しなかった(これは気候条件次第で変化するだろうが)。またこのテントの魅力は他にもあって、構造上ルーフ部分が高く、かつ広いため、ソロテント特有の圧迫感がないとか、ポールの格納ケースがそのままヘッドランプ用のランタンになったり、テントとフライシートの収納バッグが、それぞれテント内にぶら下げる小物入れになったりと、とても気が利いている。来年、もしコロナが落ち着いてイエローストーンに行くことができたなら、このテントをリュックに入れて持って行くことに決めた。

というわけで、新しいテントの機能性を確認できたのはよかったが、新たに大きく問題のある機能を発見してしまった。それはわたしの体力だ。12日のキャンプ行で撮影機材を含む約15キロのリュックを背負って、標高差1600メートル、距離13キロの片道をピストンするためのギリギリの体力、脚力しかないことがわかった。あわよくば来年はもうひとつ峰を超えて向こう側の谷にあるイワナの楽園へ足を伸ばそうと考えてもいたのだが、鍛錬なしには難しそうだ。下りの登山道で休憩している人と話す機会があって、72歳の彼は「もうムリだということがわかった。キャンプ行はコレを最後にして、来年からは大人しく小屋泊にする」とちょっと寂しそうだったが、「同感です」と答えたわたしの歳を知った彼は「ダメです。小屋が混むから60代の方はテント担いで上がって下さい」と笑われた。


# by bbbesdur | 2021-09-23 14:06 | flyfishing

#738 テント親衛隊

#738 テント親衛隊_a0113732_20500619.jpg


日本のアウトドアメーカーにはどちらかというと非メッシュ製テントが多く、米国のメーカーにはメッシュが多い。長い間の日本の山岳文化がそうさせているのか、あるいはアメリカ人と日本人の脂肪の厚さのちがいに起因するものなのか、はっきりしない。しかし米国メーカーも日本で売れないのは(日本の代理店も)困るから、米国では販売しない非メッシュモデルを日本限定で販売している。ビッグアグネスもニーモも日本限定品が存在しているのだ。で、このところのキャンプブームで人気が集中しているニーモのタニは現在ネット上で在庫がある店がない。

メッシュテントの3大美点は、結露しにくい、軽い、暑くないで、非メッシュの弱点はまさにそこにある。つまり結露しやすく、重くて、暑いのだ。でも、本当のところ、機能よりもわたしが気にしているのは、血を血で洗う派閥抗争である。メッシュ派、非メッシュ派、どちらにも親衛隊がいるのだ。こんな世界の果てにある超目立たないblogだからといって油断してはいけない。不用意にゴタクを並べて、なぜわたしが非メッシュ派なのかを説明した途端に、火の手が上がり、世界の果てが炎上する。世界の果てで燃え上がる炎を見ている人などいないというのに、焼身自殺さえ辞さない狂信者たちがいるのだ。フツーに暮らしている人には世界の果てで燃えさかる炎は見えないが、アウトドアに興味がある人の鼻には煙の匂いが届く。

で、余計な争いは止めよう、人類みな兄弟じゃないか、という日米どちらの陣営にも属さないオーストラリアのメーカーSEA TO SUMMITは、メッシュ製と非メッシュ製の選択ができるラインアップでテント製品のデビューを果たした。製品のヴァリエーションを増やす商品戦略は、間違いなくネガティブ要因として利益性にはね返ってくる。だからたぶん利益性を度外視して、人類の平和を優先しているんだと思う。賢い。人類が滅ぶとテントが売れなくなることに気付いているのだ。

SEA TO SUMMITの現在の日本代理店はロストアロー社で、創設者の坂下直枝氏はイヴォン・シュイナードの『アイスクライミング』の日本語訳者であり、著名な登山家でもある。パタゴニアの前身、シュイナード・イクイップメント時代からのシュイナードの盟友らしい。ロストアローという代理店の素晴らしさは、オスプレイのリュックを直に購入したときの営業の対応でわかった。それに日米の価格差がほとんどない(というか為替を考えると、日本の方が安いモノもある)のが、ダマされやすい消費者としてはとてもありがたいのだ。

で、メッシュ製と非メッシュ製をラインアップしているけれども、やはり日本では非メッシュ人気が高く、現在ALTO TR1 PLUS(非メッシュの方)はネットで在庫を置いている店がない。売り切れているのだ(つづく)。


# by bbbesdur | 2021-09-22 21:02 | flyfishing