#6 ダダッ娘

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 それぞれの人生にはさまざまな局面があるけれども、ぼく自身についていえば、住宅地の裏の廃道にこの手の玩具を捨てるような事態に陥ったことはない。この廃道は、朝こそ通勤者や散歩者の姿があるが、街灯がなく、過去に若者が死んでいるために夜歩く者はいない。ガードレールはその昔この道に車両が走っていた名残である。そんな廃道だからこそ、人目を忍んでやってくる者もいる。
 画面の左上に見えているのは包装紙とビニール袋、その下には「ダダッ娘」と書かれたパッケージ。その右に朝露に濡れて横たわっているのが問題の核心である。
 ぼくは捨てた人物と開けた人物は同一ではないと見た。ブツは見たところ使い古されたようには見えなかったし(使い込むとどこがどう変化するのか知らないとしても)、包装紙もぱりぱりしていて真新しかった。ぼくの推理はこうだ。
 捨てた犯人は若い女性である。フった男から送りつけられてきた腹いせの品の扱いに困ったのだ。もちろん家のゴミ箱に捨てることなんてできない。ブツを包み直した女は家族の目をごまかすためにスーパーのビニール袋に入れ、こっそりと夜更けに外に持ち出し、夜陰に乗じて捨てた。そして翌朝一番の散歩者(おそらく年配の人物)が発見して、包み紙を開き、やややっ、と慌てふためき、そのまま投げ出したのではないか。じっさい投げ出されたような配置で転がっていた。
 しかし性って、どうしてこんなに禍々しいの?
 with GRDII 2009/1/29撮影
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# by bbbesdur | 2009-01-29 00:34 | around tokyo

#5 a boy and three men

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 自分がこんな少年だったこともあるんだよね。いろいろとちがうこところもおおいかもしれないけれど、でも少年だったことはあるんだ。
 with GRDII 2009/1/27撮影
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# by bbbesdur | 2009-01-27 23:28 | around tokyo

#4 george washington

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 空母は怖い。なにが怖いかって、着艦するときが怖い、それも死ぬほど怖い、らしいのだ。知り合いのパイロット(だった大尉)がいうには、しょんべんチビらないヤツの方がどうかしている(まあ、アメリカ人はこういう表現をしちゃうことがおおいからね。ぼくのせいじゃない)。
「想像してごらんよ。君はいま太平洋の上空を1万フィートの高度で、しかも音速で飛んでる。空母がどんなおおきさに見えるとおもう?」
 ぼくはカマボコ板くらいかなあとおもったが、彼に理解できるはずはないのでやめた。
「葉っぱだ。海に浮かんだグレーの葉っぱにしか見えないんだ。でも葉っぱだったらまだ見えているからいい。もういちど想像してみてほしい。君はいま太平洋の上空を1万フィートの高さで飛んでいる。しかし君の視界には漆黒の闇しかない。わかるね、夜なんだ。1万フィートの高さで飛んでいることを目の前の高度計で知っているだけだ。やがて着艦すべき空母が下に見えてくる。そのとき空母がどんなおおきさに見えるとおもう?」
 ぼくはすこし怖くなって、黙って首を振った。
「豆電球だ。昔、プラモデルで車のヘッドライトなんかに使ったアレだ。アレが漆黒の洋上、とうか洋上らしきのっぺりとした暗い平面、に消えそうになりながら光っている。そのときいつもおもうんだ。わたしはこれで死んでしまう、って」
 彼は生唾を呑みこんで、まるでいままさに着艦体制に入ったような顔つきになった。
「着艦しようなんておもっちゃいけない。仲間内ではフレンドリー・カミカゼって呼んでいるけども、空母に体当たりするつもりじゃないと着艦できない。わたしが海軍を辞めて、ユナイテッド航空に入社した理由はね、もう抜ける髪の毛がなくなっちゃったからなんだ。夜間着艦のたびに髪の毛が抜けてね、つるつるになったとき、これはヤバいとおもった。こんどは頭の中身が抜けるとおもってね」
 彼はそういって見事に禿げ上がった頭を撫でて笑った。
 ボーイング747をオヘアからナリタまで飛ばすのは、トウキョウのハイウェイを運転するよりリスクが低いらしい。空母への夜間着艦は深夜の首都高速を200キロで飛ばすようなかんじかな、と元大尉はいう。
 ぼくは夜明けを待ちながら、ただ一機だけぐるぐると空母の周りを回っているジェット戦闘機を想像して彼の横顔を見つめた。
 with GRDII 2009/1/26撮影
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# by bbbesdur | 2009-01-26 22:49 | around tokyo