#607 米兵の休日

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 若い男ふたりと女ひとりの構図はうまくバランスが取れるからいい。といった撮影上の都合はともかくとして、じっさい3人の間がどんなバランスになっているのかと、ぼくは砂浜のヤドカリを撮りながらしばらく観察していた。男ふたりのの行動はどこかぎくしゃくしてスマートじゃなかったが、かといって女性の気を引こうとしているようでもなかった。女性にしてもどちらか一方に気があるという風ではなかった。3人がてんでバラバラに、つかず離れず、言葉を交わしたり、黙って寝転んだりしつつ、太陽の光をそれぞれの裸に受けているだけのことだった。せっかくの気持ち良い休日にひとりで宿舎に籠っていてもツマラナイから海にでも行こうか、そうおもった3人が、キャンプ・シュワブのそれぞれの部屋を出た通路でバッタリいっしょになり、そのまま3人で海岸までやってきたという風情だった。その3人の距離感がこの日の光にふさわしかった。
 with E-M5 45/1.8 2012/10 宜野座
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by bbbesdur | 2012-10-27 00:20 | okinawa

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 意図的に持ちこまれようが、なにかの偶然で生育するようになろうが、いまや帰化植物は日本固有の植物生態系を壊すために歓迎されることはない。美しければ我慢する気にもなるが、たいがいの帰化植物は美しくない。平野部における代表格はセイタカアワダチソウだろう。「憎まれっ子、世にはばかる」の謂れのとおり、イヤなヤツというのは、つまりは競争意識が強く、自分の都合を最優先して生きているから、必然的に勢力を広げやすい。そんなイヤなヤツにも弱点はあって、セイタカアワダチソウの場合、他の植物の繁殖を防ぐために放出していた物質が、繁殖し過ぎると自分に作用してしまうらしく、近年は減りつづけているらしい。自分で仕掛けた地雷を踏んで自爆してしまっているわけで、同情の余地はない。
 平野部にも多いが山に釣りに行っても、必ず目にするのがヒメジョオンだ。セイタカアワダチソウと同じく北アメリカ原産種である。開花の季節が渓流釣りのシーズンと重なっている。帰化植物にしては可憐だが、しかしそれにしてもどこの山に行っても、林道沿いに咲いていて、山野の光景を単一化してしまっているから感心しない。セイタカアワダチソウ同様、日本生態学会から「日本の侵略的外来種ワースト100」に選ばれている。
 with E-M5 ED60mm/f2.8 macro 自宅付近
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by bbbesdur | 2012-10-16 21:57 | flower

#605 朝の意外性

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 一年の中で秋がいちばん好きと答えるぼくは、一日の中でいつがいちばん好きか? と問われるとき、朝と答える。うっかり夜と答えそうになるが、じつは夜が好きなわけじゃない。酒が好きなだけで、夜が好きなわけではないのだ。
 秋と朝は、後に控えている季節、時間帯が長く安定しているという共通点がある。冬も昼も長い。一方、秋とおなじく、朝も短い。そして常に移ろっている。時間に関わるおなじ特性を好きであるというとは、あるいはぼくのように秋が好きな人は、朝が好きである可能性が高いのかもしれない。
 朝が好きな人はロマンティックだという説は聞いたことがないし、一見、朝のイメージはロマンティックから遠く離れている。しかし朝というのは始まりであり、希望であり、望みであり、つまりは生きることへの欲望である。朝はその清新なイメージとは裏腹に、じつはロマンティックな時間帯なのだ。
 with RX100 2012/10 長津田
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by bbbesdur | 2012-10-15 08:35 | around tokyo

#604 秋を愛する人は

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 小学6年生の修学旅行で阿蘇山に行ったとき、バスガイド譲がみんなに聞いた。
「四季のなかでいちばん好きなのは?」
 ぼくはすこしだけ考えて、やっぱり秋だな、とおもった。たまたま一番前に坐っていたぼくは彼女に問われて「秋です」と答えた。すると彼女はいきなり歌い出したのだった。
「秋を愛する人は、心深き人。愛を語るハイネのような ぼくの恋人」
 ぼくはその唐突さに驚いたことは覚えているが、彼女の歌が上手かったかどうかはまるで覚えていない。もちろん当時はハイネなんて知らなかったし、愛も恋も知らなかったが、当時からぼくはたしかに秋が好きだった。愛を語るハイネというのは、早い話がロマンティストということだろう。なぜ秋が好きだと、ロマンティストなのか?
 春から夏にかけて文字通り無数の虫が生まれるが、越冬するわずかな虫を除いて、草叢に住む虫たちはたいがい秋に死んでしまう。虫はあまりにひっそり死ぬ。一匹いっぴきの虫の死に声があったら、秋は阿鼻叫喚の季節となり、ぼくたちは寝ることも出来なくなるだろう。しかし虫たちはただ草むらで静かに死んでゆくのではなく、死ぬ前に愛を交わす。たぶんけっこう激しく。幸いなことに交尾で喘ぎ声を漏らす虫はいないからぼくも安眠出来る。
 交尾してから、さほど日を空けずに死んでしまうという虫たちの手順がいい。フランス人は交わった後の仮眠を「小さな死」と呼ぶと開高健がどこかに書いていたが、愛し合ったあとにほんとうに死んでしまえたら、虫みたいでとっても素敵だ。交尾したあとに、いっしょに暮らしてみたり、長い時間を共にするからいろいろと面倒なことが起こるのだ。愛を交わしたあとに残った時間の短さこそがロマンティシズムの真骨頂であり、読書の秋といわれるのも、物語の大半はロマンだからなのであり、シンデレラ・ストーリーの後日談なんてまるで余計なのである。
 with RX100 2012/10 自宅付近
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by bbbesdur | 2012-10-13 04:35 | around tokyo

#603 正しいデザイン

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 畳屋はどこもかしこも四角でなくてはならない。このような素晴らしく畳屋らしい店の中から顔を出した渡辺さんがまさか円顔なんてことは許されないし、その性格はもちろん徹底的に四角四面でなくてはならず、ぜったいに融通無碍なんてことはあってはならない。
 with RX100 2012/10 御殿場
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by bbbesdur | 2012-10-12 21:31 | west japan

#602 加齢の秋

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 奥白根山に登った。未明に起き出したまでは良かったが、車のルームライトを消し忘れたらしくバッテリーが上がってエンジンがかからなかった。登山口に着いたらランチを買い忘れたことに気がついた。近くにコンビニなんてあるはずがなかった。運命が「山に登ってはいけない!」と示唆しているのではないか、という考えが一瞬だけ頭をよぎったが、迷いを捨て、思い切って車で山を下り、コンビニでおにぎりとみそ汁を買ってもどった。
 幸い凶事は起こらず、無事下山して気づいた。運命だって?! バカな。加齢がゆえ、激しく忘れっぽくなってきているだけのことではないか。山と同じく紅葉の時期といいたいところだが、すでに枯葉になりかけているようなのだった。
 with RX100 2012/10 奥白根山
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by bbbesdur | 2012-10-08 21:42 | around tokyo