#259 新幹線の眠り

a0113732_2255101.jpg

 広島から新幹線に乗って東京にもどった。広島駅ビルにあるお好み焼き屋「麗ちゃん」に行って、ビールも飲んで、お腹いっぱいになったから、京都までひたすら眠っていた。起き抜けの京都駅で停車中にぼんやりとしていたら、唐突に昔のことをおもいだした。
 大学生時代にサークル活動で京都にやってきて、最後の晩に飲んだくれて、しかし宿に泊まるお金もなくて、オールナイトに行って映画館で寝ようということになった。20歳のぼくは酔っぱらっていたけれども、目を瞑ったところで、眠ることはできなかった。ときどき館内に響き渡る女性の声がうつらうつらとし始めたぼくを叩き起こすのだ。映画はピンク映画だった。ピンク映画とポルノ映画のちがいを訊ねたぼくに、2浪の友人は、厳密なちがいはないがポルノは日活ロマンポルノときまっていて、予算規模がピンク映画とちがうんだ、となんだかとても玄人っぽく語った(ちなみに「アカルイミライ」や「東京ソナタ」の黒沢清の監督1本目はピンク映画だった)。玄人っぽいわりには2浪の彼も、仲間全員とおなじく眠れないままに真っ赤な目をして新幹線に乗り込んだ。彼だってたかだか22歳だったわけだ。ぼくたちは新幹線で泥のように眠った。
 そんな若い日々をおもいだしながら、ぼくはまた眠ったけれども眠りは浅かった。名古屋あたりでは完全に目が覚めていて、いつからか通路側の隣に坐っていた若い女性が化粧を始めた。たぶんあのころのぼくとおんなじ年齢くらいだった。ぼくが君の年齢だった時代に人前で化粧するのは娼婦くらいだったんだよ、と無言で語りかけながら、ファウンデーションやらなにやらの匂いに、ぼくは「はーっくしょん」と特大のくしゃみをした。
 with GRD3 2009/12/21撮影 広島駅
[PR]
by bbbesdur | 2009-12-23 23:51 | west japan