#195 六本木の休日

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 昨日、久しぶりに休日出勤をした。ひと気のないオフィスでPCに向かって黙々と仕事をした。じっさい他に人がいなかったから、黙々とせざるをえなかったわけだ。仕事は極めてはかどった。ときどき声が聴こえたけれども、それは自分の発したものだった。
 朝9時過ぎに着いて防犯システムを解除し、夜9時過ぎにすべてをロックしてオフィスを出た。ぼくが最初で、ぼくが最後だったが、その間に数名が出勤してきた。普段はおなじフロアに300人以上いる。そのなかで休日出勤してきたのはごくごく一部だったが、みんなおそろしく寡黙だった。ぼくとおなじ部門の同僚も出社してきたが、ぼくたちもほとんど口を開かなかった。
 ランチ時に彼はひとり黙って階下にあるセブンイレブンに行って、カップヌードルを買ってきて、ずるずると音をたてて啜った。スープの匂いにそそのかされて、ぼくもエレベーターに乗ってセブンイレブンに行った。いつもランチ時に行列のできるセブンイレブンにはだれもいなかった。450円のノリ弁を暖めてもらい、オフィスにもどって黙々と食べた。同僚はすでにPCに向かって集中していた。
 ノリ弁を食べ終わって、ぼくはすぐに仕事にもどった。夕方近くなって、同僚の携帯電話がなんどか鳴った。駅前で待ち合わせて家族と夕飯を食べるのだろうか。彼がオフィスを出たのは5時過ぎだった。
 ぼくはブラインド越しに赤く染まり始めた窓の向こうを眺め、気を取り直してPCに向かった。7時頃、ひとりの男がやってきて、あなたが最後だから旋錠はよろしく、といって帰っていった。それからもぼくは仕事をした。そして9時になるころ、ぼくはPCの電源を切った。
 黒くなったディスプレイに背後の椅子が映っていた。ぼくと彼はほぼ半日背中合わせでいたのに、ほとんど口をきかなかった。それが急に不思議になった。けっして仲が悪いわけじゃない。いいヤツだし、彼もぼくを嫌なヤツだとおもっているとはおもえない。
 ぼくは立ち上がり、エレベーターに乗って階下に降り、地下鉄に乗った。
 がらんとした地下鉄の座席に腰を下ろしても、ぼくはまだ仕事のことをかんがえていたし、家に帰り着き、風呂に入って食事をして、布団のなかでも仕事のことをおもっていた。
 with GRD3 2009/9/2撮影 六本木
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by bbbesdur | 2009-09-06 21:08 | around tokyo