#162 北海道シリーズ 第2回 <海辺の遊び>

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 ぼくが初めて北海道を訪れたのは、21歳のときのことだ。上野駅から夜行の急行八甲田に乗った。ひとりで旅に出ないといけない、そういった切迫した気持ちに押されるように選んだ先が北海道だった。
 キスリングと呼ばれた横長のおおきなリュックを友人に借りた。Tシャツ、ジーンズにキスリングが北海道を目指す青年の正装だった。夏になると本土から大量に渡ってくるそんな青年たちを、地元の人は「蟹族」と呼んでいた。
 青函連絡船に乗りこんだとき、演歌の故郷にやってきたような気がして、なんだか意味もなく気恥ずかしかった。
 ユースホステルを渡りあるき、ヒッチハイクをした。朝方、積丹の国道に立って手をあげていると、銀色のスカイラインが止まった。リーゼント頭のツッパリの若者たちが乗っていた。ぼくは怯んだ。男ふたりに、女ふたり。ぼくより年上に見えた。
 ぼくは失敗したなとおもいながらドアを開けた後部座席の彼女の脇に坐った。
——海に行くつもりなんだけど。
 ぼくは、そこでいい、と答えた。
——海で遊ぶのよ。
 車内の4名はちいさく笑った。ぼくにその笑いの意味は不明だった。
 彼らが目指した海岸は積丹半島の突端にあった。彼らは海には入らずに砂浜で貝殻やらなにやらを拾っていた。とても散漫な動作だった。遊んでいるようには見えなかった。ぼくは、礼をいって、先を急ぐ旨を伝えた。
——なんだ、いっしょに遊んでいくのかとおもってたのに。
 リーダー格の男からそういわれて、ぼくは申しわけなくおもった。とうとうぼくには最後まで彼らがなにをして遊んでいるのかがわからなかった。
 それからまた車を拾って、小樽に出た。最初に乗せてくれたのはひとりの老人だった。農作業へ向かう途中らしく、ちかくの街まで乗せてくれた。道中、彼は、ひとりで知らない人物の車に乗ることの危険をかなり念入りにぼくに語って聞かせた。
 街のガソリンスタンドで老人は知り合いらしい中年の女性に、「この人を小樽まで乗せていってくれないか?」といった。スカーフをしたその女性は、なにも訊かずにただ「ええ、いいわよ」といって、ぼくを小樽まで乗せてくれた。
 with GRDII 2009/7/10撮影 函館本線
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by bbbesdur | 2009-07-13 19:54 | series