#161 北海道シリーズ 第1回 <スーパー白鳥1号>

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 スーパー白鳥1号は蟹田を過ぎて青函トンネルへと向かう。車掌が変わるというアナウンスがあって、変わった車掌には北海道のイントネーションがある。
 空は曇り空。うっすらと明るい灰色のなかに、たくさんの黒い雲が浮かんでいる。
 車両のなかに青函トンネルの詳細がアナウンスされる。
――全長53.85キロ。鉄道用の海底トンネルとしては世界最長の長さを誇ります。トンネル最深部は海面から240メートル・・・・・・。
 案内を聞いていると、観光列車に乗っているような気分になる。
 車両のなかのデジタル案内板にトンネルの名前がつぎつぎと現れる。大平トンネル、津軽トンネル、大川平トンネル、第1今別トンネル、第2今別トンネル、第1浜名トンネル、第2浜名トンネル、第3浜名トンネル、第4浜名トンネル。
 車両のなかに、いまか、いまか、という、期待のような空気が満ちている。
 そしてついに<次が青函トンネル>という文字が現れる。その直後、車内は真っ暗になり「ゴー」という音とともに<青函トンネルに入りました>という赤いデジタル文字が流れる。
 下り坂だからだろうか、電車はぐんぐん速度をあげている。
<次は木古内、ただいま竜飛海底駅付近を通過中です。最深部には青と緑のランプが点灯しています> 
 つづいて父親殺害の青年のニュース、パチンコ店放火の男の供述がテロップでながれる。ぼくたちは憂鬱な時代を生きている。まるでトンネルのように暗い時代を。
 車内になにかを期待する空気がある。平らになった感覚があって、みんなきょろきょろするが緑と青のランプがない。
<ただいま吉岡海底駅付近を通過中です>
 どうやらぼくの乗る車両の乗客全員が緑と青のシグナルを見落としてしまったらしい。そんなことってあるの。ぼくは車両の左右に緑と青の盛大なイルミネーションが連なる瞬間を待って、カメラを構えて待っていたのだが。
 列車は上り坂に向かって平らな部分を勢いよく駆け抜ける。
 上り坂だ。飛行機が離陸するときのように列車が傾いているのがわかる。この感覚は列車では初めての経験だ。
 ときどきものすごい騒音がする。雷が鳴っている雨の夜のような。ぼくは海底にいるのだ。
 海水が怒濤のようにトンネルに流れ込んできているような錯覚があって、ちょっと怖くなる。とおもっていたら、突然車内に閃光がゆきわたるように明るくなって、わっ、と一気に外に出た。北海道だ。
 with GRDII  2009/7/10撮影 函館駅
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by bbbesdur | 2009-07-12 21:20 | series