HAPPY HOUR

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 彼女は、離婚しようとおもっている、と友人に語っていた。ランチタイムともなれば基地内のフードコートは混み合い、10人掛けの大きなテーブルは盛大な相席となる。ぼくは仕事で、いつもひとりだから、たいがい席の隅っこで本を読んでいる(フリをしてこっそり話を聴いている方がおおい)。兵隊たちの会話は、ぼくたちサラリーマンの昼時のおしゃべりとなにひとつ変わらない。嫌な上司がいて、仕事の査定はいつだって曖昧で、出世は叶わず、能力のない同僚には先を越されるし、家庭は波乱含みで、北朝鮮は狂っているし、イラクはもう終わったことだし(このあたりのニュアンスはぼくらより現実的かつ切実)、クサナギ君は逮捕されるし、まあ、総じて、良いことはすくない。そもそも運が良かったり、良いことがあっても、幸運は他人と共有できるはずがないから、いきおいランチタイムの会話は暗い方向へと向かう。どちらかというと愉しい印象のあるランチタイムだが(たぶん仕事から一時的にでも離脱できるから)、じつはテーブルの周囲は暗い話題で花盛りなのである。
 彼女がユニフォームを着ていないのは、すべてに嫌気が差して、その日づけで海兵隊を辞めることにしたからだ。娘を連れてスポーケンに帰るといっていた。
 ホテルにもどって地図で調べたら、スポーケンはワシントン州の東の外れにあるちいさな街だった。知らない空の、知らない街で、この絶望的な不況下に暮らす母と娘を想像したぼくは、ふたりに幸運が待っていることを、すこしだけ本気で願った。
 with GRDII 2009/4/23撮影 米海兵隊岩国基地
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by bbbesdur | 2009-04-24 09:07 | west japan