2009年 04月 05日
Cherry Moment <DAY 2 花はどこへ行った>
「やっぱりジャパンの春はサクラよねえ」
「ママ、サクラって、きれいなの?」
「そう、世界で一番うつくしい花なんだから。きっとびっくりするわよ」
「ねえ、ママ、どれがサクラなの?」
「見えるでしょ、あのピンクの・・・・・・」
「ぜんぜん見えないよー、人でいっぱいで!」
「オー、ノー!」
新宿御苑の新宿門前で係員がマイクロフォンで叫んでいる。
「たいへん申しわけございませんが、ただいま入場制限中です。入場券をお求めの方は列の最後尾にお並びください」
「なによー、この行列! ここでいつまで待てっていうのよ」
「お急ぎでしたら、大木戸門まで歩いていただければ、多少は待ち時間がすくないかと・・・・・・」
「ばかねえ、あなた、急いでるんじゃなくて、逆よ、わたしたちお花見にきたのよ。のんびりしようとおもってきたんじゃないの」
「では、ここでのんびりと待っていただくということで」
「おいおい、冗談いってる場合かよ!」
一同、かなり殺気だってくる。
「待つのなんてイヤだー! ボク、お腹空いたんだー」
「じゃあ、歩く?」
「歩くのもヤダー! おにぎりが食べたいよー!」
「お花見なんだから、お花を見ながら食べるのよ」
「ヤダー! お花見なんてキライだー!」
「あらあら、男の子なのに花より団子なのね」
こんなとき、なんといってもフレキシブルなのはサラリーマンなのである。日々培っている適応力であっさりと桜をあきらめ、公衆の目も憚らずに新宿門前の歩道にシートを広げてエネルギーを補給する。けっして価値ある時間を無駄にしないのだ。
で、大木戸門の方はどうなっていたかといえば、状況は変わらないのであった。
ぼくは前日の東京の桜満開宣言を受けて”Cherry Moment”を予告したことを激しく後悔していた。ランチタイムに仕事をさぼって新宿御苑まできたというのに桜を撮るどころか、入場すらできないのである。
というわけで、ぼくは新宿御苑の桜に門前払いを食らい、門の外に一本だけお情けで立っている桜と大勢の人々を眺め「東京に春がきたなあ」とかんじいったのである。
その後、なぜかカレーが食べたくなって、ちかくのちいさなインド料理店に入った。ナンを千切ってカレーに浸しながらおもった。この大不況下の平日に桜を見るためにこれだけの人が集まってくるなんて、素晴らしいことじゃないか。日本人は政治集会は苦手だけれど、桜を見るためなら人ごみを承知で集まってくる。この桜エネルギーがきっとまた日本を活気づけることになる、きっと、と。
with GRDII 2009/4/3撮影 新宿御苑門前