#684 痔の話 第10回 

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 痔瘻は、お尻にもうひとつ穴が開くという、無意味に過剰な病気である。オレはひとつだけでいいからね! と言ってもムダだ。どうせバイパスを作るなら、第2東名みたいにピカピカで立派なヤツにして欲しかったが、残念ながらぼくのヤツは旧天城トンネル並の古クサさだった。
「ここまでポッカリ開いているのも珍しいです」
 と医師は言った。ぼくとしては余裕のあるところを見せたくて、なんとか気の利いた一言を言おうとしたのだが、その前に医師は、
「これ痛いです……」
「イターーーーー――!!!!!」
 医師としては痛みの確認は患部特定のために欠かすことの出来ない手順であることはわかる。しかしわかり易すぎるくらいぽっかり開いているんだったら、もう少し遠慮した触り方をしてくれればいいものを、ほとんど穴(もう一つの)に指を突っ込んだかとおもうような勢いでやるから、ほとんど1日の体力を使い切ったような汗が一気に吹き出した。
「ですよね」
 と医師の声は、前回患部が腫れ上がった時をコピーしたかのように、はっきりと嬉しそうなのである。わかりやすい医師だなあ――、とおもう余裕などその時のぼくにはなくて、ただひたすら、もうあそこには一切指を触れないでくれ、という強い気持ちでいっぱいだった。指で触れられてこれだけ冷汗が出るくらいなのだから、万が一手術ともなれば最低失禁は間違いないところだとおもった。じっさい診察中、もしくは手術中、何かの拍子に催してしまわないかという恐怖は常にある。殊に治療中は抗生剤を服用しているためにお腹が緩くなっているからなおさらである。
 医師はぼくの第2の穴にいたく満足し、ぼくもひとまず患部の特定が出来たことには安心して医師の見立てを待ったが、なお執拗にK門鏡を覗き込みつづけていた彼は、ふいに
「おやっ」
 と言ったのである。

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by bbbesdur | 2017-03-22 22:14 | health care