#680 痔の話 第6回 イチロー並みのメジャー・リーガー

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 単に膿を出すだけの切開を手術だと誤解していたぼくには「やっぱりそうだったか」という気持ちもあった。というのも、ぼくが病院で経験したのは、かつて職場の先輩たちが口々に嘆いていた「痔の手術の信じられない痛み」からは程遠い痛みだったからだ。手術の痛みを恐怖したぼくは、インターネットで「切らずに治す」方法を探したが、あっという間に玉砕した。「切らずに治す」ことが出来るのはイボ痔と一部の切れ痔に限ってのことなのだった。痔瘻に関しては「手術する以外に治す方法がない」ということがはっきりしていた。ただ、インターネットで得た情報に救われた点もあった。曰く「手術そのものは痛くない」という体験談が多かったのだ。痔の手術技術は、この20年くらいで急速に進歩したらしく、かつて痛い思いをしたぼくの先輩たちの体験談はいまや伝説らしかった。
 ぼくのような痔のシロウトがインターネットで自分の病気についてあれこれと調べることには様々な意義があった。なによりも体験談の多さから痔という病気が特殊でないことがわかって安心した。たとえばこの調査を見て欲しい。日本における痔の経験者は、なんと75%を超えているのだ。日本人の¾が罹患したことがある、あるいは目下進行中だというのに「いやー、参ったよ、今回の風邪はしつこくて」というふうには語られない。排泄器官というのは日常的に秘匿しつつ、具合が悪くなった時にも他人に隠し通される不憫な黒子なのだ。ほんとうはイチロー並みのメジャー・リーガーだというのに。
 もうひとつ興味ある事実は、日本人と西洋人の痔への対処の違いだった。日本人が自分の痔を認識して病院に行くまでに要する日数はなんと365日を超えているというのだ。いぼ痔なら市販薬で治してしまおうとする日本人とは対照的に、西洋人は罹患から通院までが10日程度だという(さっきネタ元のサイトを探そうとしたんだけども見つかりませんでした。細かい数字はともかく、いずれにしてもこのくらいの大差であることは間違いありません)。やはり日本人は病気になっても、恥ずかしがり屋さんなのだった。
 ネット検索のさらなる効用は、いろいろと調べるうちに、徐々に覚悟が決まって来ることだ。釣りから戻ったぼくはその日にガーゼに付着したイヤなものを確認したが、じつはそれ以降、膿らしきものの流出は止まっていたのである。ぼくはその時期、これで治ったのかもしれない、と思いたがっていた。ところが翌週のある朝、横須賀の駐車場で車に乗り込む際、まさに「ビリッ!」という感じで患部が避けてパンツが濡れた感覚があった。痛みはさほどでもなかったが、仕事中のお漏らしはマズイのですぐにトイレに行って、恐る恐るパンツを見ると、膿だった。じつはこれもネット検索で事前知識はあったのだ。一時的に治癒したようにおもえるが、そうではない、と書かれてあったのだ。この一件で、ぼくの覚悟は決まったのだった。つづく。

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by bbbesdur | 2017-03-03 20:19 | health care