#387 富士山と原節子

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 富士山が最後に噴火してからおよそ300年が経つ。今後、いつ噴火したとしても、富士山が逆に美しくなることはありえない。かならず醜くなる。老いらくへの一方通行は人間だけにかぎったことではない。
 そろそろ富士山が噴火して、形が醜く崩れたとき、なんといって慰めるか、かんがえておいたほうがいいんじゃないか。そのときはこちらもけっこうショックだろうし、急には優しい言葉をおもいつかないだろうから。

「これからはもう人目を気にしないでいいんだ。目立たないって、けっこう気楽なもんなんだよ。鼻くそ掘ったり、おならをしても、いいんだ」

「もし静岡県がこれまでの態度を急変させて、冷たい仕打ちをするようになったなら、こっちにおいでよ、大歓迎する。そもそもウチは平たすぎるんだ。茨城県」

「山だからって姿形で差別するなんて、ぼくは断じて許さないからね。なんたって肝腎なのは性格だよ」

「もうこれからはゲイシャ・ガールといっしょくたにされるなんてことはないから安心だね」

「長い間の営業サポート活動、ほんとうにご苦労さまでした。しばらくはどこぞの湯にでも浸かって、からだをお休めください。ANA、JAL、JR東海」

「キミの噴火と同時に、シンメトリーの時代は終焉を迎えた。ゲイジュツは爆発だ」

「銭湯のお客さんの目のなかには、永遠にキミの美しい姿が焼き付けられているんだ。キミをわすれる日本人なんていやしない」
 
 でも、よくよくかんがえてみれば、富士山は女性じゃないから、ハラスメントには当たらない。だったら、いっそ本音をいってしまおうか。

「美しくない富士山なんて、富士山じゃない」

 じっさい、年老いた往年の大女優を見るような気になるのだろうか。
 しかし事態は大女優よりも深刻だ。低くなった富士山は原節子のように雲隠れできず、醜く変貌した姿を人前に晒しつづけなくてはならない。生きる気力を失って、飛び降りたくても、低くては死にきれず、永遠に青木ヶ原を彷徨いつづけるしかないのか。
 やはり、いまのうちに、慰めの言葉をかんがえておかなくては。

 with GRD3 2011/2
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by bbbesdur | 2011-02-06 22:57 | around tokyo