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#347 イエローストーン その6

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 ひとり旅は孤独だ。あたりまえである。孤独になるために旅に出るのだから。でも、これまでの長いひとり旅体験のいつかにぼくは気づいた。
「ひとりになりたい!」
 といって飛び出していったところが、じつは旅の空では強く人を求めているという事実に。たぶんぼくは自らを孤独にさせることによって、ぼくのなかにもういちど人を求める気持ちを湧きあがらせているのだとおもう。人は犬や狼や猿とおなじように社会的動物だから他者といるときの喜びが自分が生きている喜びに直結する。イヤな人物が身近にいると自分の人生もイヤになり、素敵な人がそばにいると、人生バラ色になる。人は人に依存して生きていると、つくづくおもう。
 そんな関係性に疲れてひとり旅に出かけたところが、自分が求めているのがじつは人であるという矛盾に気づいて愕然とする。
 今回の旅ではおもわぬ出会いがあって、じつは魚よりもその出会いの方がぼくには貴重だった。
 ウエスト・イエロー・ストーンの街にはBlue Ribbon Fliesというフライフィッシング・ショップがある。今年でちょうど30年を迎える老舗で、Craig Mathewsというすでに伝説的なフライフィッシャーマンが始めた店だ。
 その店にひとりの日本人女性が働いている。じつは大変なことだ。Blue Ribbon Fliesを訪れる釣り人はどちらかといえばクレイジーに偏っている人物が多く、そんな人物からの質問に「知らない」と答えることはできない。いまどの川で何が羽化していて、効果的なフライはこれだ、といって客をフライセレクションの棚に誘導しなくてはならない。これを、しかも英語でやることは、簡単ではない。
 それにこれはぼくのBlue Ribbon FliesでのCraig Mathewsと奥さんのJackieとのすくなからぬ交流のなかで気づいたことなのだが、彼らは店に入ってくる釣り人たちと、積極的に、かつ極力商売っ気がないように、あくまでも釣り人仲間であろうという会話をこころがけることをモットーとしている。そのあたりのフレンドリーさこそが彼らが売っている傑作フライ以上に、Blue Ribbon Fliesの売りなのだ。そのあたりのハンドリングに経営者であるJackieはかなりシビアであるはずで、そんなBlue Ribbon Fliesから乞われて働くようになったMinori Smithさんには畏れ入る。
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 まさかイエローストーンでおにぎりが食べられるとはおもわなかった。そして足りなくなったグリーンドレイクパターンを巻くために、タイイングセットまで貸してくれる人がいるなんておもわなかった。
 そしてたぶんこれはひとり旅であったからこそ、ぼくのこころに沁みたんだとおもう。ありがとう美乃里さん。ほんとうに愉しかった。
 with D700 1.4/24mm、GF1 1.7/40mm、GRD3
by bbbesdur | 2010-07-08 08:47 | 未分類